個VS社会という日常の戦争

ずばり傑作。残酷な現実に立ち向かう女性ふたり――ペ・ドゥナ(私)とキム・セロン(少女)が凛々しく美しい!
閉鎖的なコミュニティでの児童虐待、といえば『トガニ 幼き瞳の告発』等があるが、こちらはさらに複雑で、婦警の“ある秘密”を軸に現代社会の諸問題が重層的に渦巻く。ひりひりとリアルでありつつ、清澄な詩情と寓話的な美しさを湛えた作風は、同じくイ・チャンドンのプロデュースで、女性の新人監督が手掛けた『冬の小鳥』に通じるものだ。加えてこちらはミステリーの味わいもある。
エンドクレジットの是枝裕和の名にも注目。だがむしろ本作に強い影響を与えたのは岩井俊二の『リリイ・シュシュのすべて』でないかと思う。