鋭い権力批判とフェミニズムの精神を内包した堂々たる時代劇

江戸時代の末期、様々な理由で離婚を望む女性たちが駆け込む縁切寺を舞台に、封建社会の理不尽に耐えつつも逞しく生きる人々の姿を活写していく。
刀を振り回すやくざ者に丁々発止の話術で対抗する大泉洋の見事な芸達者ぶりもさる事ながら、教養を身に付けることで強い自立心に目覚めていく戸田恵梨香の確かな演技力が物語を牽引する。
財政再建の名目で貧しい庶民ばかりが割を食い、過度な綱紀粛正によって社会全体が不寛容となった天保の改革の時代に、現代の日本社会が色濃く投影される。鋭い権力批判やフェミニズムの精神を大らかな人情喜劇で包み込み、なおかつ日本的な侘・寂の情緒によって風格ある時代劇へと仕立て上げられた。