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己を知らぬ者に他者の痛みも苦しみも理解はできない

2015年7月8日 なかざわひでゆき 雪の轍 ★★★★★ ★★★★★

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雪の轍

 舞台はカッパドキア。ホテルを営む中年男アイドゥンは地元の名士であり、まるで悟りを開いた賢者のように振舞うが、実際は父親の莫大な遺産のおかげで今の地位がある。俳優として大成できなかった彼は、書物や脚本で覚えたような正論の鎧をまとって自己を正当化し、他人の欠点や過ちを蔑んで相手を悪者に仕立てる。だが、本人にはその自覚が全くない。ゆえに、他者の痛みや苦しみにも想像が及ばない。
 本作はそんな彼が人生の黄昏時にしてようやく自己と向き合い、激しい葛藤を重ね、やがて再生していく姿を描く。3時間15分の長尺だが、澱みなき言葉の力と圧倒的な映像によって、最後まで観客をスクリーンに釘付けにする。稀有な作品だ。

なかざわひでゆき

なかざわひでゆき

略歴:日本大学芸術学部映画学科卒、同学部大学院卒。映画・海外ドラマのライターとしてキャリア30年。TVガイド誌やオンライン情報サイトなどを中心に幅広く執筆活動中。雑誌「スカパー!TVガイドBS+CS」(東京ニュース通信社刊)で15年続くコラム“映画女優LOVE”をはじめ各テレビガイド誌で特集記事やコラムを執筆。著書は「ホラー映画クロニクル」(扶桑社刊)、「アメリカンTVドラマ50年」(共同通信社刊)など。海外取材経験も多数。旧ソ連のモスクワ育ち。

近況:最近は今さらながらK-POPのボーイズバンドにドハマり中。一番の御贔屓はMCNDですが、NCTやTREASUREも大好き。もちろんBLACK PINKとかITZYとかEVERGLOWとかガールズにも夢中です。

サイト: http://eiga3mai.exblog.jp/

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