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クーキー (2010):映画短評

クーキー (2010)

2015年8月22日公開 95分

クーキー
(C) 2010 (C) Biograf Jan Sverak, Phoenix Film investments, Ceska televize a RWE.

ライター3人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 3.7

なかざわひでゆき

シュールなキャラと切ないストーリーは東欧アニメの醍醐味

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 古くなって捨てられたボロボロのテディベア、クーキーが、遠く離れたゴミ処理場から持ち主の少年のもとへ戻るべく大冒険を繰り広げる。
 物語的には『トイ・ストーリー』路線だが、そこはシュヴァンクマイエルやトルンカを生み出したチェコ産人形アニメ、いわゆるキモカワ系のシュールなキャラデザインが独特の世界観を形成する。クーキーが旅路の途中で出会う森の精霊や妖怪たちもアニミズム的な土着性が濃厚だし、VFXを活用しつつも基本は昔ながらのマリオネットという手作り感もレトロで心地よい。
 そして、持ち主の少年の辛い境遇といい、クーキーのけなげさといい、物語の根底に流れる悲哀の切なさよ。東欧アニメ好きは必見。

この短評にはネタバレを含んでいます
平沢 薫

この奇妙な精霊たちをガシャポンにしてほしい

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 森にいる精霊のような存在たちは、木の葉や実など森にあるもので出来ている。ゴミ捨て場で生じた者達はビニールや金属片で出来ている。それらの奇妙な存在たちの素材感と、ただ可愛いわけではないデザインに魅了される。彼らを生み出したのは、チェコのゲームクリエイター&デザイナー集団、アマニタ・デザイン。彼らの人気ゲームの主人公は"壊れたロボット"とのことで、その主人公も、本作の"物質と生物の間の完全ではない何か"なのだろう。本作のマリオネットという生命のないものに息吹を与える手法ほど、彼らを動かすのに適したものはない。彼らをセットではなく実際の大自然の中に置いて、その奇妙な存在感を際立たせている。

この短評にはネタバレを含んでいます
森 直人

チェコ産、マイナーコードの詩情が絶品。

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

「ねえ、クーキーだよ。僕はゴミじゃないとみんなに言って!」
森の中からクーキーがお家に電話をかけるシーンだけでも、目が潤むほどの哀愁。物語の土台はチェコ版『トイ・ストーリー』(特に『2』に近い)と言えるが、大枠は持病の喘息を患う男の子の空想の中の冒険だ。詰め物のおがくずがハミ出たぽんこつのクーキーは、彼の分身として過酷な試練に挑戦する。

いわゆるパペットアニメではなく、「人形劇+実写」をVFXで仕上げていった映像が素晴らしい。自然の温度感が伝わってくる。むしろアニメーションの語源であるアニミズム(汎霊)的な共生世界の感触が実現されており、それは劇中で打ち出される死生観と完璧にマッチしている。

この短評にはネタバレを含んでいます
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