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草原の実験 (2014):映画短評

草原の実験 (2014)

2015年9月26日公開 96分

草原の実験
(C) Igor Tolstunov's Film Production Company
森 直人

そして半時間ばかり天に沈黙があった(『サクリファイス』より)

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

静謐で美的だが、これは同時に衝撃作だ。草原にぽつんと立つ樹木など、タルコフスキーの“遺産”を数々継承しつつ、もっと直截な風刺の力を装備している。

台詞なしの作風は、詩的リアリズムとでも言うべきか。無垢で美しい少女を中心に立たせた映画世界は、おとぎ話と苛烈な現実の暴力的な接続だ。それは穏やかでささやかな日常生活の周りに、実は狂った野獣のような現実や政治が蠢いているというイメージをもたらす。

我々の大切な日々が巨大なものに破壊される不安、とは常にこういう形をしているのではないか。だから本作は激しく胸を締めつける。『風が吹くとき』も『TOMORROW/明日』もそんな映画だった。

この短評にはネタバレを含んでいます
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