刑務所の閉鎖空間で人間性に目覚めていく狂犬のような若者

愛情や優しさを知らずに育った狂犬のような若者が、刑務所の過酷な閉鎖空間の中で他者との関わり方を学び、やがて人間性に目覚めていく。
重要な鍵を握るのは、同じ刑務所に収容されている実の父親との関係。暴力でしか愛情を表現できない屈折した父親の存在は、若者にとってある種のトラウマであり呪縛であるからだ。とはいえ、ただでさえ憎らしい父親が塀の中で若い男の愛人なんか作ってたら、余計に受け入れられないだろうとは思うのだが…(^^;
また、囚人同士の派閥争いやイジメ、看守の汚職などが蔓延る刑務所内の日常も徹底したリアリズムで再現され、その小さな世界を荒廃した現代社会の縮図として描いている点も面白い。