日本の”UTSU”を見つめるマイク・ミルズの優しい視線

2013年10月19日 今 祥枝 マイク・ミルズのうつの話 ★★★★★ ★★★★★

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マイク・ミルズのうつの話

本作を観ながら、2009年に放送され、今年書籍化もされたNHKの「うつ病治療 常識がかわる」という大きな反響を呼んだ番組を思い出した。従来の薬物療法や心理療法への重大な問題提議がなされている一方で、それらを否定するかのような印象も与えかねない内容に、現実に治療中の患者や関係者の抗議の声も大きかった。適切な投薬によって救われる命があることを忘れてはいけないのと同時に、薬だけでは解決し得ないのがうつの難しさである。

この問題はいまだ尾を引くもので議論が不十分に思えるが、2007年に完成した本作では問題の核心がさらりと、だが鋭く浮き彫りされていることに驚かされる。もっとも、本作は製薬業界の闇を糾弾したり治療法の是非を論じるものでもない。

何よりも、うつを患う5人の日本人男女に寄り添うミルズの視線の親密さが愛おしい映画だ。そのもの言わぬ優しいまなざしが伝える、他者への思いやりと理解の重要性は、さまざまな社会問題に通じるものがあるだろう。『サムサッカー』や『人生はビギナーズ』でも、ミルズの映画はいつもそんな当たり前だけど大切な気持ちを、じんわりと胸に広がる温もりと共に思い出させてくれる。

今 祥枝

今 祥枝

略歴:いまさちえ/映画、海外ドラマライター。『BAILAバイラ』『eclatエクラ』『日経エンタテインメント!』『日本経済新聞 電子版』ほかに連載・執筆中。ほかにプレス、劇場パンフ、各局のHPなどに寄稿。時々、映像のお仕事。著書に『海外ドラマ10年史』(日経BP社)。海外ミュージカルファン。

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