「純・映画的」×「ザ・芸能界」の非・バランス

2013年10月12日 森 直人 おしん ★★★★★ ★★★★★

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おしん

いま、なぜ『おしん』!?――最初はその一言に尽きる!と思っていたが、いざ観賞すると、まったく別の方向で面食らった。「本気」なのだ。謎の目的に向かってスタッフ・キャストが一丸となった壮絶な気迫が伝わってくる。すこぶる真面目な力作である。

きっと企画としては最初からアジア全域のマーケットを視野に入れていたのだろう。本作はみごと、中国のアカデミー賞「金鶏百花映画祭」で国際映画部門の最優秀作品賞に輝いた。しかしありていに言うと、この映画は俗受けしないと思う。今どき愚直なほど「純・映画的」な志に満ちており、ロングショットや長回しなど、文法的にはむしろアート映画の範疇に入る。大陸的な風格の叙事詩。そして濱田ここねの芝居を丹念に見せる、少女の成長譚。相米慎二組の助監督出身で、新人の女子中学生をヒロインに起用した『非・バランス』(2001年)からスタートした冨樫森監督のひとつの集大成と評してもいいほど。

ただ表現として真摯なだけに、どうにもお水っぽい印象との肉離れが気になる。それを象徴するのが、雪山でもメイクの乱れていない上戸彩の“特別ゲスト”感――つまり「ザ・芸能界」の匂いなのだと思う。

森 直人

森 直人

略歴:映画評論家、ライター。1971年和歌山生まれ。著書に『シネマ・ガレージ~廃墟のなかの子供たち~』(フィルムアート社)、編著に『21世紀/シネマX』『シネ・アーティスト伝説』『日本発 映画ゼロ世代』(フィルムアート社)『ゼロ年代+の映画』(河出書房新社)ほか。「週刊文春」「朝日新聞」「キネマ旬報」「メンズノンノ」「Numero TOKYO 」「映画秘宝」などでも定期的に執筆中。※illustrated by トチハラユミ画伯。

近況:YouTubeチャンネル『活弁シネマ倶楽部』でMC担当中。9月19日より、原一男監督&島野千尋プロデューサー(『れいわ一揆』)の回を配信中。ほか、行定勲監督 feat.東紗友美さん(『窮鼠はチーズの夢を見る』)、足立紳監督(『喜劇 愛妻物語』)、荒木伸二監督 feat.SYOさん(『人数の町』)、城定秀夫監督&平井珠生さん(『アルプススタンドのはしの方』)、田中圭監督(『島にて』)、内藤瑛亮監督(『許された子どもたち』)、諏訪敦彦監督(『風の電話』)、想田和弘監督(『精神0』)、深田晃司監督(『本気のしるし』)、豊島圭介監督(『三島由起夫vs東大全共闘』)、入江悠監督(『AI崩壊』)、タナダユキ監督(『ロマンスドール』)、岩井澤健治監督&大橋裕之さん(『音楽』)、片山慎三監督(『岬の兄妹』)と『パラサイト 半地下の家族』を語り尽くす特番、森達也監督&河村光庸プロデューサー(『i 新聞記者ドキュメント』)、小林啓一監督(『殺さない彼と死なない彼女』)、竹内洋介監督(『種をまく人』)、渡辺紘文監督&雄司さん(『普通は走り出す』など大田原愚豚舎の世界)、瀬々敬久監督(『楽園』)、今泉力哉監督(『アイネクライネナハトムジーク』)、二ノ宮隆太郎監督(『お嬢ちゃん』)、大森立嗣監督(『タロウのバカ』)等々を配信中。アーカイブ動画は全ていつでも観れます。

サイト: https://morinao.blog.so-net.ne.jp/

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