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マネー・ショート 華麗なる大逆転 (2015):映画短評

マネー・ショート 華麗なる大逆転 (2015)

2016年3月4日公開 130分

マネー・ショート 華麗なる大逆転
(C) 2015 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.

ライター6人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4.3

なかざわひでゆき

日本の原発事故にも通じる米住宅バブル崩壊の裏側

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 サブプライム住宅ローン危機を事前に予見していた人々が、その世紀の金融破綻に乗じて巨万の富を得る。そんな皮肉としか言いようのない物語(しかも実話だってさ)を軽快なテンポと絶妙のユーモアで描く。
 バブル崩壊なんて絶対にありえないとタカをくくる投資銀行、彼らに都合の良い情報しか流さないメディアや専門家、それに踊らされる投資家。それはそのまま、日本の原発メルトダウンを招いた背景に重ね合わせることができるだろう。今まさに起きている最悪の事態を眼前にしてもなお、根拠のない楽観論で銀行の肩を持つ御用専門家の姿なんぞ、我々にとってはデジャヴそのもの。結果的に一般庶民ばかり被害を被るという点も同じだ。

この短評にはネタバレを含んでいます
くれい響

「最後の言い訳」の使い方が絶妙すぎて!

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

次々畳みかける金融用語の嵐に、本筋と関係ないカメオによる分かりやすい解説、義眼特有の目の演技までするクリスチャン・ベールら曲者たちの共演と、その怒涛の展開とスタイリッシュな映像に圧倒される。また日本食レストランでの徳永英明の「最後の言い訳」の使い方は絶妙すぎるし、経済破綻というテーマがテーマだけに、後味爽快なハッピーエンドでなく、余韻を残すあたりも評価できる。とはいえ、どこかカタルシスに欠けるのは、意外とシンプルな話を、多くのギミックで描いたハッタリ感の強さが、ハンパないから。また、マーゴット・ロビー繋がりで言うと『ウルフ・オブ・ウォールストリート』の影響も否定できない。

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山縣みどり

金融破綻の裏側を愉快かつ丁寧に解説する快作

山縣みどり 評価: ★★★★★ ★★★★★

サブプライム・ローン問題もリーマン・ショックも他人事だったが、当時の狂った状況や異常事態を生んだ背景がよくわかった。傍観者なので、マーゴット・ロビーらセレブを起用しての経済用語や状況説明も実に愉快で楽しい。さすがはウィル・フェレルの相棒アダム・マッケイ監督。実は悲しく悲惨だった状況をコミカルに描き、そこから金融マンと彼らに踊らされた人間の現実との乖離ぶりが浮かび上がる。役者陣は納得の好演だが、特に印象的なのがヘビメタ偏愛のトレーダーを演じたクリスチャン・ベール。ある症状を思わせる言動なのだが、医師でもあるトレーダー自身が自己診断した結果と同じ。いや、すごいよ。

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相馬 学

一見難解だが、コメディ畑の監督だからこその妙味あり

相馬 学 評価: ★★★★★ ★★★★★

 リーマン・ショックの裏側は正直、複雑でよくわからないが、それでも楽しめたのはコメディ畑の監督の技量ゆえだろうか。

 CDSやらCDOやらの名前だけではよくわからない投資対象物が飛び交い、それを買う・売るのはどういうことなのかを、再現ドラマのパロディのよろしくユーモアたっぷりに解説してくれる。ドラマの流れの停止を恐れない、思い切りのよさがハマッた。展開の飲み込みもよくなるというものだ。

 何より、バブル崩壊を見抜き“裏張り”を試みる、はみ出し者たちのドラマがいい。スリリングであるのはもちろんだが、邦題の“華麗”とは一線を画する悲壮さが妙味。この“大逆転”劇に勝者はいない。

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平沢 薫

「俺たち」シリーズのアダム・マッケイ監督、覚醒!

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 ブラックな笑い、狂躁的なリズム、加速するスピード。2000年代半ばのバブルに酔うアメリカで、その虚像に気づいた男たちが、経済破綻の到来を予測して株式市場で大博打を打つ。そういう話なのに、株式の説明はまったくせず、比喩だけでストーリーを進め、随所にドラマと関係のないスターたちがその仕組みを観客に向かって比喩で説明するCM的映像を挿入する、その強引なワザに脱帽かつ爆笑。その観客を"理解ではなく流れに乗せてその気にさせる"手口が、金融マンの顧客勧誘手口とシンクロするところが、本作の真髄。監督・共同脚本はコメディ「俺たち」シリーズのアダム・マッケイ。あのドライなギャグ感覚で金融界を撮るとこうなる。

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森 直人

大傑作!――バブルの狂騒の裏と、「無知の知」のチェック漏れ。

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

「やっかいなのは何も知らないことではない。実際は知らないのに知っていると思いこむことだ」というM・トウェインの有名な警句で始まる本作は(原作での引用はトルストイだ)、誰もが結果だけで知ったつもりになってる世界金融危機をバラエティ的手法で解きほぐす。猛烈な情報量。『俺たちニュースキャスター』のA・マッケイによる鮮やかな大仕事だ。

マイケル・バーリ(C・ベール)以外は人名など脚色されているが、登場するのは「空気」ではなく「事実」を読んだ実在の賢者たち。邦副題には「華麗」とあるが、世界規模の崩壊に賭けた「憂鬱」な大逆転劇。我々凡夫は、自分がどの程度アホかを正確に知る事だけがサバイバルの道だと知る。

この短評にはネタバレを含んでいます
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