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ディストラクション・ベイビーズ (2016):映画短評

ディストラクション・ベイビーズ (2016)

2016年5月21日公開 108分

ディストラクション・ベイビーズ
(C) 2016「ディストラクション・ベイビーズ」製作委員会

ライター6人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 3.8

ミルクマン斉藤

危険水域の昂揚感に駆りたてる聖なる兇気。

ミルクマン斉藤 評価: ★★★★★ ★★★★★

一般人であろうがヤクザであろうが、強そうな奴を見かけると一方的に殴りかかっていく柳楽優弥。理由なき狂気の沙汰だが、既知の社会的モラルから完全に外れた姿はむしろ純粋で、どこか中上健次の暴力を髣髴とさせる。それに対し、単なる虎の威を借る狐・菅田将暉の、女ばかり標的にする卑劣さはまさに今の世界の醜さだ。彼らに巻きこまれる “被害者”小松菜奈も最初こそクリシェに過ぎないものの次第に内なる本性を露わにしていく。ディストーションの向こうにアコースティックを配した向井秀徳の音楽も不穏を増幅。8mm時代からの攻撃性を維持しつつ、『イエローキッド』を経たのち商業映画に殴りこみをかける真利子哲也の意気や良し!

この短評にはネタバレを含んでいます
清水 節

ファイト・クラブ的な破壊の野性を柳楽優弥が不敵に不死身に体現

清水 節 評価: ★★★★★ ★★★★★

殴る、蹴る、壊す。暴力礼賛ではない。内なる肉体の叫びにピュアだ。
鑑賞する整然としたドラマではない。目撃する混沌としたアクションだ。
ファイト・クラブ的な破壊の野性を柳楽優弥が不敵かつ不死身に体現する。
同調して本能を開く菅田将暉の今っぽさ。小松菜奈には壁ドンではなく殴打がよく似合う。
現代社会に突如として現れた喧嘩祭り的衝動。スマホとYouTubeが拡散する恐怖と興奮。
動機や勝敗とは無縁のフィジカルな暴走は現実的な痛みを超え、あくまでも映画的だ。
この調子で真利子哲也監督には、粋のいい俳優を起用して思う存分暴れまくり、
この国の去勢された商業映画の世界を壊しまくってほしい。

この短評にはネタバレを含んでいます
くれい響

ここでも菅田将暉、一択。

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

確かに、そそられるキャスティングである。だが、柳楽優弥の使い方は想定内だし、小松菜奈の使い方に至ってはサイテーで、彼女の新たな魅力を一切引き出せていない。菅田将暉に関しては、設定や状況も含め、明らかに『そこのみにて光輝く』ありき。だが、ときに柳楽を喰うほど、不気味な表情を浮かべるからあなどれない。一部で絶賛された『イエローキッド』同様、主人公にまったく感情移入できないのはさておき、ここまで暴力描写を全面に打ち出していながら、観る者に痛みをほとんど感じさせないのは致命的。向井秀徳の音楽も含め、90年代臭満載だが、その時代を知らない若手俳優たちが刺激的に見えるような作りは、どこか罪深い気もする。

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なかざわひでゆき

ただのカルトにとどまらない普遍性を宿した怪作

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 無言のまま理由もなく通行人に殴りかかって喧嘩をふっかける若者。地方都市の片隅で鬱屈したものを抱えた主人公の、破壊的な暴力衝動が周囲へと感染していく。
 論理的な説明は一切されない。この得体の知れなさ、薄気味の悪さ、そして歪んだカタルシス。平凡な日常の裏側に隠された闇、人間の内側で息を潜める狂気がスクリーンを覆い尽くす。
 作り手も観客も手探りのまま理由なき暴力の正体を見定めていくことになる。決して万人受けする映画ではないが、しかし単なるカルトに留まらない普遍性も宿す。見るからにヤバイ空気を醸し出す柳楽優弥、女の子やオバサンばかりボコボコにするヘタレなクソガキ菅田将暉など若手の怪演も見事だ。

この短評にはネタバレを含んでいます
平沢 薫

言葉はなく、映像と音楽が語る

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 台詞で説明しない。その映画のありようは、主人公と同じ。主人公は、誰かを殴り、誰かに殴り返され、また殴り返すことでしか、楽しくなれない。そんな彼をほとんどの人々は拒絶するしかないが、彼に出会って彼の何かに反応してしまう人がいる。
 言葉がない分、映像と音楽が雄弁。監督は「イエローキッド」の真利子哲也。音楽はNUMBER GIRL、ZAZEN BOYZ等の向井秀徳。冒頭から鳴り渡る音楽は、90年代ノイズ系ギタポから派生したかのような歪んだ音。それがHIP HOP系や自宅録音系ではないことが最初は意外に感じられるが、映画が進むにつれて、この音が鳴る理由が腑に落ちていく。

この短評にはネタバレを含んでいます
森 直人

おそらく今年一番の問題作にして大傑作!

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

人間の獣性や暴力衝動をテロリズム的な回路で考察する事。これが初期から一貫する真利子哲也イズムである。今作は柳楽優弥らの逸材を得て、その主題を最もソリッドに体現した究極作となった。また『ゆとりですがなにか』等の怪演でも示すように、柳楽の佇まいは殺伐とした中に絶妙なユーモアを湛える。

イデオロギーやモラルの枠外でゲームをくり返す――この自由意志のキャラ化には『ダークナイト』のジョーカーという先例があるが、本作はヒトという本能の壊れた動物の生理として描いた。監督は参考文献にホイジンガの『ホモ・ルーデンス』を挙げていたが、栗本慎一郎の『パンツをはいたサル』の世界でもある。向井秀徳の音楽も最高!

この短評にはネタバレを含んでいます
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