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悪の法則 (2013):映画短評

悪の法則 (2013)

2013年11月15日公開 118分

悪の法則
(C) 2013 Twentieth Century Fox

ライター4人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 3.3

なかざわひでゆき

ライトな観客に向けた啓蒙エンターテインメント

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 世の中にはあんたの想像を遥かに超えるヤバい連中がゴロゴロいる、だから素人がなまじっか裏社会に手を染めようなんて考えちゃいかんですぜ、ってことを約2時間に渡って説教させられる映画だ。

 主人公は金も名声も美女も手に入れたエリート弁護士。そんな彼が傲慢と強欲から悪事に手を染めてしまったため、周りを巻き込んで地獄のような転落の道を歩む。ある意味でシェイクスピア的な自業自得の物語なのだが、主人公の動機が短絡的で曖昧な上にその後の展開が紋切り型なため、どうも説教臭さばかりが鼻についてしまう。人気スターが次々と無残な最期を遂げる姿は新鮮だが、南米麻薬カルテルの極悪非道を描いた作品ならばゼヴ・バーマン監督の「Borderland」(‘07・日本未公開)など遥かに恐ろしいトラウマ的映画が他にある。

 しかし、巨匠と大物俳優たちが組んであえてこの映画を世に送り出した背景には、麻薬や犯罪を巡る深刻な問題の社会的蔓延があることは想像に難くない。ハリウッド的な生易しい解決策に逃げなかったことは評価していいだろう。重たい社会派映画などを敬遠するライトな観客層に向けた啓蒙エンターテインメントだ。

この短評にはネタバレを含んでいます
中山 治美

使い古されたネタ、されど変わらぬ薬物を巡る抗争

中山 治美 評価: ★★★★★ ★★★★★

 『トラフィック』(00)、『ワイルド・スピード MAX』(09)、『野蛮なやつら/savage』(12)etc…。私たちは、米国と南米の国境沿いを舞台にした薬物を巡る血で血を洗う抗争をどれだけ見て来ただろう。本作の脚本を務めたC・マッカーシーの原作小説『ノーカントリー』(07)しかりだ。かろうじて豪華キャストで最後まで魅せてくれるが、これらの作品を見慣れた人にとって物語の展開は、想像の範疇を超えないだろう。M・ファスベンダー演じる主人公が、泥沼にハマっていく過程も、納得するには寛大な心が必要だ。唯一、新鮮さを感じるのは、銃以外での殺戮法。それとて、北野武監督『アウトレイジ』でバリエーションに富む非道さを見せられた後では、まだまだやな…とつぶやかずにはいられない。
 ただ、同様のテーマが繰り返し描かれている背景には、米国民にとって身近な問題であり、状況はさらに深刻化していることを示唆しているのかもしれない。前述した殺戮法しかり、血と銃弾を浴びたトレーラーを家族ぐるみで手際よく処理している様を見ると空恐ろしさを感じる。
 個人的にはお腹いっぱいだが、まだまだ同様の作品は誕生しそうだ。

この短評にはネタバレを含んでいます
清水 節

肉体切断に執着した陰惨な殺し方カタログ

清水 節 評価: ★★★★★ ★★★★★

 巨匠がメガホンを執り、主演級スターが5人も顔を揃えている。“偽装表示”などなく、強めのスパイスも利かせたのに、決して美味くはない高級レストランの料理のようだ。
 
 マイケル・ファスベンダーが、友人ハビエル・バルデムとヤバイ仕事に手を出し、ひょんな誤解から裏組織の逆鱗に触れて、愛するペネロペや関与したブラピらに、容赦なき残忍な魔の手が伸びる。ただそれだけのストーリーを、官能性たっぷりにリッチな画づらで思わせぶりに描く。キャメロン・ディアスが180度開脚してフェラーリのフロントガラスに下半身を押し当てる場面で生唾を呑むか、ネタと受け取り苦笑するか。筆者は後者だ。
 
 「別の種族」と怖れられる中南米裏組織による手口が酷い。肉体の切断に執着している。何か凄いことを見せられていると興奮させる術。しかしそれは、巨匠と名優の足跡に惑わされた錯覚にすぎない。迷走する異才が刹那の刺激で煙に巻こうとしたものの、後味の悪さだけが尾を引く。魅惑の悪は存在せず、結果的に品行方正で安全な暮らしを希求させるプロパガンダに堕している。陰惨な殺し方カタログに終始したという意味において『アウトレイジ』にも等しい。

この短評にはネタバレを含んでいます
相馬 学

豪華キャストにつられてうかつに近づくと大ヤケド!?

相馬 学 評価: ★★★★★ ★★★★★

 超がつくほどの豪華なキャストに、鬼才リドリー・スコットの監督。それだけで楽しそうなエンタメや感動作を想像したらイタい目に遭う。そう言い切ってしまいたいほどのバイオレントな、ある意味、問題作。

 『ノーカントリー』の原作者コーマック・マッカーシーが脚本を手がけて生み出したのは、同作にも似た“悪”にまつわる物語。誰でも悪に憧れたり、欲が優先してちょっとした悪事に手を出したりするものだが、この世界にはそれらを駆逐するより巨大な悪がある。小悪党がうまく立ち回ったつもりでも、より大きな悪にガツンと蹴り飛ばされる現実。そんな状況を俯瞰して見せるのだから、これだけのスターが出ていても誰にも感情移入できない。しかし、できないからこそスコットが目指したであろう先に述べたテーマが伝わるのも事実。そういう意味では、本作から何を得るかで好き・嫌いは分かれるかもしれない。

 非情な現実を描くうえで、スコットは容赦ない惨殺描写を重ねるが、これまたバイオレンスが苦手な方はドン引きするに違いない。しかしバイオレンス映画が好きならば、某スターの“一世一代の”と形容したいほどの“殺され演技”は必見。

この短評にはネタバレを含んでいます
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