シネマトゥデイ

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トルナトーレ監督、いい仕事してますねえ!

  • 鑑定士と顔のない依頼人
    ★★★★

    「とにかくストーリーテリングを堪能したい!」という映画ファンには、いまコレを推したい。主人公は美術品に人生のすべてを捧げ、恋愛経験ゼロのまま老境に達しようとしている天才鑑定士(劇中で童貞と告白!)。そんな彼のもとに謎の美女が現れ、遅すぎる色ボケが狂い咲く……という滑り出しから「本物と贋作」を主題とした物語に誘い込む展開が実に巧妙。初見の驚きに加え、細部の抜かりない仕掛けゆえリピーターを呼び込む力は『ユージュアル・サスペクツ』のレベルに肉薄している。

    ジュゼッペ・トルナトーレ監督といえば『ニュー・シネマ・パラダイス』や『海の上のピアニスト』などヒューマン系のイメージが強いが、そもそも長編デビュー作の『“教授”と呼ばれた男』を始め、『記憶の扉』や『題名のない子守唄』といった心理操作や記憶をモチーフとする渋いミステリーの作り手でもある。今作はそっちラインの到達点と断じても過言ではない。

    ミスリードを鮮やかにキメる作劇(脚本もトルナトーレのオリジナル)はトリッキーという形容も可能だが、演出はひたすら正攻法。丁寧で律儀な仕事の積み重ねこそが表現の奇跡を起こす良い見本でもあるだろう。

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森 直人

森 直人

略歴: 映画評論家、ライター。1971年和歌山生まれ。著書に『シネマ・ガレージ~廃墟のなかの子供たち~』(フィルムアート社)、編著に『21世紀/シネマX』『シネ・アーティスト伝説』『日本発 映画ゼロ世代』(フィルムアート社)『ゼロ年代+の映画』(河出書房新社)ほか。「週刊文春」「朝日新聞」「キネマ旬報」「TV Bros.」「メンズノンノ」「Numero TOKYO (Web)」「映画秘宝」などでも定期的に執筆中。※illustrated by トチハラユミ画伯。

近況: YouTubeチャンネル『活弁シネマ倶楽部』でMC担当中。2月14日より、入江悠監督(『AI崩壊』)の回を配信中。ほか、タナダユキ監督(『ロマンスドール』)、岩井澤健治監督&大橋裕之さん(『音楽』)、片山慎三監督(『岬の兄妹』)と『パラサイト 半地下の家族』を語り尽くす特番、森達也監督&河村光庸プロデューサー(『i 新聞記者ドキュメント』)、小林啓一監督(『殺さない彼と死なない彼女』)、竹内洋介監督(『種をまく人』)、渡辺紘文監督&雄司さん(『普通は走り出す』など大田原愚豚舎の世界)、瀬々敬久監督(『楽園』)、今泉力哉監督(『アイネクライネナハトムジーク』)、二ノ宮隆太郎監督(『お嬢ちゃん』)、大森立嗣監督(『タロウのバカ』)、樋口尚文監督(『葬式の名人』)等々を配信中。アーカイブ動画は全ていつでも観れます。

サイト: https://morinao.blog.so-net.ne.jp/

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