時事的テーマを盛り込み海上救出アクションに仕立て上げた秀作

2013年11月30日 清水 節 キャプテン・フィリップス ★★★★★ ★★★★★

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キャプテン・フィリップス

 記憶に新しいソマリア沖で起きた海賊襲撃事件の映画化だが、あくまでも息詰まるエンターテインメントを志向している。生命を脅かされた状態下、如何に生き残るのか。4人の海賊を同時に射殺することなど可能なのか。プロセスを丹念に積み重ねる。事実に基づくだけあって展開は一筋縄にいかない。大海原での攻防戦や人質が味わう恐怖のリアリティをドキュメンタリータッチで描いていく。ポール・グリーングラス監督は多用してきた手持ちキャメラによる画面動を抑え気味にし、俳優に委ねた。トム・ハンクスを極限状況に追い込み、表情の変化で絶望と希望を巧みに表現する。
 
 金を収奪しようとする海賊を単純な悪として描いていない。漁師だった男たちが、生活のために海賊になってしまった事実にも触れる。しかし彼らの正当性を認めることなく、人間の愚行として客観視する姿勢は、マスコミ報道よりもニュートラルにさえ映る。トム・ハンクスの演技的見せ場は最後の最後に訪れる。徒手空拳サスペンスに始まり、孤立無援サバイバルを経て、海上救出アクションへ到る。時事的テーマを素早く盛り込み、娯楽活劇に仕立て上げた秀作だ。

清水 節

清水 節

略歴:映画評論家・クリエイティブディレクター●映画.com、シネマトゥデイ、FLIX●「PREMIERE」「STARLOG」等で執筆・執筆、「Dramatic!」編集長、海外TVシリーズ「GALACTICA/ギャラクティカ」DVD企画制作●著書に「いつかギラギラする日 角川春樹の映画革命」「新潮新書 スター・ウォーズ学」●WOWOW「ノンフィクションW 撮影監督ハリー三村のヒロシマ」企画・構成・取材で国際エミー賞、ギャラクシー賞、民放連最優秀賞 受賞

近況:●円谷プロ「ULTRAMAN ARCHIVES」クリエイティブディレクター●「シド・ミード展」未来会議ブレーン、図録寄稿●ニッポン放送「八木亜希子LOVE&MELODY」

サイト: http://eiga.com/extra/shimizu/

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