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エリザのために (2016):映画短評

エリザのために (2016)

2017年1月28日公開 128分

エリザのために
(C) Mobra Films - Why Not Productions - Les Films du Fleuve - France 3 Cinema 2016

ライター2人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 3.5

清水 節

娘を思うがゆえに不正をも辞さない、歪んだ社会に染まる父の堕落

清水 節 評価: ★★★★★ ★★★★★

 カンヌで監督賞に輝いたこのルーマニア映画は、傷ついた娘の未来を思うがゆえに、父が不正をも辞さず東奔西走する物語。被写体に寄りすぎず、注視し続ける冷徹なキャメラが醸成する張り詰めた空気。見巧者なら演出技術にまず目が行くだろうが、炙り出される背景に思いを馳せることこそ重要だ。『4ヶ月、3週と2日』で80年代チャウシェスク政権下、禁じられた中絶を手助けするヒロインを描いたC・ムンジウ監督。本作には、独裁打倒後も理想は程遠く、歪んだ社会を生んでしまった親世代の忸怩たる思いが滲み出ている。しかし逆説的に、そんな倫理的葛藤が一大事とは思えぬほど、利己的な社会で感覚が麻痺している自分を再認識させられた。

この短評にはネタバレを含んでいます
なかざわひでゆき

娘を思うあまり不正に手を染める父親の心情が切ない

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 英国留学を決める大事な卒業試験の前日に暴行され、試験どころではなくなった娘を助けるため、賄賂に裏工作とあらゆる手段を講じる父親。その背景には、不正や汚職が蔓延するルーマニアの厳しい現実、愛する娘をそんな国で苦労させるよりも希望の持てる外国へ送り出したいという切実な親心が浮かび上がる。
 独裁政権を倒して自由と民主主義を勝ち取ったはずのルーマニア市民を待ち受けていたのは、賄賂とコネを使って要領よく立ち回る狡賢い人間ばかりがいい思いをし、正直者がバカを見る歪んだ社会。父親の良かれと思っての行動がどんどん裏目に出て行くのは自業自得かもしれないが、しかし心情的には責められず、なんとも胸が痛いのだ。

この短評にはネタバレを含んでいます
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