衰えた筋肉を頭脳でカバーする80年代“箱入りオヤジ”の大脱走

80年代に実現していれば事件だった。67歳のスタローンと66歳のシュワルツェネッガー、遅すぎた初の“本格”競演。往年の人気歌手が「年忘れにっぽんの歌」で勢揃いするかのような『エクスペンダブルズ』シリーズの自虐臭などなく、本気である。しかも、IQが低い活劇と揶揄されることへの返礼なのか、設定上スタローンは頭脳明晰な脱獄のプロだ。敵か味方かわからないシュワルツェネッガーと手を組み、難攻不落の監獄要塞に挑む。ありきたりだ。
とはいえ、若手や中堅のスターでは出せないオヤジ臭を放ち、老体に鞭打ちながら走って殴って銃をぶっ放す。もちろん、デ・ニーロとアル・パチーノが『ヒート』で競演したときのような観る者を高揚させる演技的ケミストリーは全く起こらない。2人の80年代アクションスターが、いや、2つの筋肉の塊が、予想通りの結末に向かっていく。
これは、「映画」そのものが後期高齢者へ向かいつつある時代の象徴かもしれない。ヒットするかどうか、それはレンタル店愛用オヤジ世代が、DVD化を待たず、転ばずに劇場へ向かって走るかどうかに掛かっている。