独自の知見に基づく読解を求め、監督は惑わし攪乱し挑んでいる

監督がテーマや読解法を語らず、謎めいたまま世に放たれた韓国映画の怪作。連続殺人の謎解きミステリーかと思いきや、オカルト映画やゾンビ映画に変質する。犯人の疑いを掛けられた素性の知れぬ“よそ者”への、人々の先入観や思い込みに応じて変化しているように映る。不安におののく集団の想念が、悪の姿形を変容させているのではないか。メディアの報じ方によって話題の人物の印象がくるくると変わるように。オープニングで「新約聖書」が引用される。肉と骨をともなってイエスが復活した教えを、本作は、悪意の実体化に置き換えたと僕は読解した。観る者独自の知見に基づく読解を求め、ナ・ホンジン監督は、惑わし攪乱し挑んでいる。