『トワイライト』の真逆を行くアダルティーな吸血鬼映画の逸品

吸血鬼の物語だが、これまで以上に特濃のジム・ジャームッシュ。古風なジャンル映画がエフェクターでぎゅい~んと歪み、独自の世界観へと変換される感覚。隠遁者の主人公は、監督がこれまで描き続けてきた脱力系ビートニク的人物=孤高のストレンジャーのバリエーションと考えていい。
ハイライトは、財政破綻する直前期のデトロイトの街を哀悼するように散歩するシークエンス。かつての音楽・文化産業が走馬灯のように回り、夜の闇に歴史の層が幻視される。
デビュー以来の才気はいまや熟々に発酵され、ベテランのミュージシャンが放つ後期名盤のような逸品に仕上がった。先頃亡くなったルー・リードで言えば『エクスタシー』あたりか?