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オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ (2013):映画短評

オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ (2013)

2013年12月20日公開 123分

オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ

ライター3人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4.3

なかざわひでゆき

芸術家の魂は永遠の命を持つヴァンパイアのごとし?

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 21世紀の現代社会にさまよう男女の吸血鬼。ジャームッシュは彼らにロマン主義的ヴァンパイア像を体現させつつ、栄枯盛衰を繰り返す浮世の儚さと暗闇で永遠に生きる者の孤独を描く。

 チャーリー・フェザーズやチェット・アトキンスを愛し、バイロン卿やメアリー・シェリーの反骨精神を受け継ぐ主人公たち。監督は彼らに時代を超越した芸術家の魂を投影しているように思える。真の才能はたとえ肉体が滅びようとも、ヴァンパイアのごとく永遠に生きながらえるのだと。

 ホラー映画マニアとしては、初期のジャン・ローランやハリー・クーメルの耽美系ヴァンパイア映画にも似たメランコリーの感じられる点も興味深い。

この短評にはネタバレを含んでいます
相馬 学

シャームッシュが描く“アーティストはつらいよ”?

相馬 学 評価: ★★★★★ ★★★★★

 ジム・ジャームッシュがバンパイアを撮る以上、フツーのホラーに見えるはずがなく、恐怖テイストは皆無。人目を避け、マイペースで生きている者たちのアウトサイダー・ドラマという方が正確か。

 ドライなユーモアやオフビートな雰囲気が活きているし、ビジュアル的にも魅力十分。夜のデトロイトの寂れた空気やタンジールの乾いた風景が実に絵になるのもジャームッシュ的だ。

 このバンパイアたちは彼のようなアーティストのメタファーのように思えてくる。生き血を得てアートを生み、一部に熱狂的に支持され、影響をあたえることで他人をアーティストにすることも。吸血鬼映画というよりは、きわめて私小説な映画なのかもしれない。

この短評にはネタバレを含んでいます
森 直人

『トワイライト』の真逆を行くアダルティーな吸血鬼映画の逸品

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

吸血鬼の物語だが、これまで以上に特濃のジム・ジャームッシュ。古風なジャンル映画がエフェクターでぎゅい~んと歪み、独自の世界観へと変換される感覚。隠遁者の主人公は、監督がこれまで描き続けてきた脱力系ビートニク的人物=孤高のストレンジャーのバリエーションと考えていい。

ハイライトは、財政破綻する直前期のデトロイトの街を哀悼するように散歩するシークエンス。かつての音楽・文化産業が走馬灯のように回り、夜の闇に歴史の層が幻視される。

デビュー以来の才気はいまや熟々に発酵され、ベテランのミュージシャンが放つ後期名盤のような逸品に仕上がった。先頃亡くなったルー・リードで言えば『エクスタシー』あたりか?

この短評にはネタバレを含んでいます
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