平凡な少女のささやかな願いに未来への希望が託される

法律の規制で映画館すら存在しないサウジアラビアで生まれた、同国初の女性監督による傑作。自立心の強い10歳の聡明な少女の日常を通じ、サウジアラビア女性の置かれた現状を浮き彫りにしつつ、未来へと希望をつないでいく。
男の子達のように自転車に乗りたい。平凡な少女のささやかな願いは、しかし宗教の戒律によって女性の行動が著しく制限された国において、叶えられることは極めて難しい。本作は社会の因習に対する少女の素朴な疑問、彼女の目に映る母親の苦悩などを丹念に描きながら、同時に市民の間で起きつつある意識改革も敏感に捉えていく。障害に屈することなく前進する少女の逞しい姿に、幸多かれと願わずにはいられない。