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彼女の人生は間違いじゃない (2017):映画短評

彼女の人生は間違いじゃない (2017)

2017年7月15日公開 119分

彼女の人生は間違いじゃない
(C) 2017『彼女の人生は間違いじゃない』製作委員会

ライター4人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4.3

くれい響

瀧内公美の時代がきた。

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

じつは本作より身体を張ってる『グレイトフルデッド』から4年、消化不良だった『日本で一番悪い奴ら』を経て、瀧内公美の時代がきた。確かに出演シーンは見せ場だらけ。ラストに流れる背中を押す主題歌も、個人的に溺愛する『東京ゴミ女』に通じるものがあり、長年女性を描いてきた廣木隆一監督のベストという見方もできる。ただ、同じ“再生”がテーマの『RIVER』じゃないが、ヒロインに焦点を絞ればいいのに、震災をめぐる人々の群像劇にしてしまったことには疑問が残る。もっと彼女に寄り添うことで、心の隙間を埋めたかったとはいえ、“なぜ、デリヘルじゃなきゃいけなかったのか?”ことに対する回答が見えてくるだけに残念だ。

この短評にはネタバレを含んでいます
なかざわひでゆき

福島の今に人間や世の中の不条理を見る

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 震災からおよそ6年。平穏な日常を奪われ、愛する家族や友人を失い、将来への不安を抱えながら生きる福島の人々の、いまだ癒えることのない悲しみや喪失感、虚無感を描く。淡々としながらも丹念にじっくりと炙り出していくドキュメンタリー的な語り口がリアリズムを増す。
 週末に東京でデリヘル嬢の仕事をするヒロイン、保証金をパチンコにつぎ込む人々など、にわかに理解しがたい部分もあり戸惑うが、しかしそこに彼らの深い心の闇を垣間見る。そもそも人間とは不条理で矛盾した不完全な生き物だから。そして、自然災害や戦争などに見舞われた世界中の町や村で、同じような葛藤を抱えた人々がいるであろうことに想いを馳せる。

この短評にはネタバレを含んでいます
山縣みどり

何かが足りない、ともがく先にあるものは?

山縣みどり 評価: ★★★★★ ★★★★★

東日本大震災で人生が変わった人たちの、ともすれば“負”と受け取られる側面に焦点を当てているが、登場人物たちが抱える気持ちや人生への不安には普遍性がある。誰だって「人生に何かが足りない」ともがくし、決着点を見出す人もいれば、永遠にもがき続ける人もいる。ヒロインがデリヘル嬢のバイトを選んだ心理は同性として100%理解はできないが、だからこそ逆に彼女が抱えている憤りや悲しみが底なしなのだろうと推測し、涙が溢れる。演じる瀧内公美は登場シーンから最後まで目をみはる巧みな演技でヒロインの複雑な心理を伝えてくれる。彼女をはじめ役者陣はみな素晴らしく、深い感動と希望を与えられた。

この短評にはネタバレを含んでいます
森 直人

『君の名は。』や『シン・ゴジラ』が描かない「場所」と「人」

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

廣木隆一監督自身による小説も素晴らしかったが、これは「映画」として新たな貌を獲得した傑作。特に瀧内公美(拍手!)が福島の仮設住宅から高速バスに乗って渋谷に向かうロードムービー的パートの、まるで「国境」を超えるような感覚の時間推移にハッとした。この週末出勤は震災以降、再編成されてしまった東京と地方の関係性、近くて遠い心的距離をまざまざと示しているように思う。

秋葉原から東北へと巡礼を延ばした『RIVER』以降、『こどものみらい~』『海辺の町で』、『さよなら歌舞伎町』も含め、3.11を起点に自らのルーツを再探究した「廣木サーガ」の決定的な一本。今泉力哉の『退屈な日々にさようならを』とも並べたい。

この短評にはネタバレを含んでいます
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