ADVERTISEMENT

十年 (2015):映画短評

十年 (2015)

2017年7月22日公開 108分

十年
(C) Ten Years Studio Limited. Aii Rights Reserved

ライター3人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4

清水 節

皮肉と憤怒と内省を込めて透視する10年後の香港ディストピア

清水 節 評価: ★★★★★ ★★★★★

 香港返還から20年。中国の影響力が強まる中、若手監督たちが紡いだ5つの短編の集積は、現在の延長線上に訪れるであろう10年後のディストピアを、皮肉と憤怒と内省を込めて透視する。テロの脅威を口実にした統制の強化、北京語が出来ないゆえ職を失う現実、焼身自殺による抗議活動の深層、文革時代の近衛兵が甦って表現規制を始める恐怖…。『ドラえもん』でさえ糾弾対象になる第5話、書店に貼られた『進撃の巨人』のポスターが暗示する“巨人”に思いを馳せた。「人の言いなりになるな。まず自分で考えよ」というメッセージが木霊する。抗わなかった後悔が招く絶望的な近未来。このメッセージは、海を越えて私たちの現在にも突き刺さる。

この短評にはネタバレを含んでいます
山縣みどり

香港が直面するさまざまな問題は他人事じゃないと思う

山縣みどり 評価: ★★★★★ ★★★★★

今から10年後の香港を描いた作品には、イギリスから中国に返還されて20年間に噴出したさまざまな問題が描かれている。なかでも怖いと思わせるのが「1国2制度」の名の下に自由を束縛しようとする中国政府の思惑や、それに盲目的に従ってしまう人々の無関心さだ。政権がおかしいと感じたら個々人がきちんと声を上げなければ、民主主義などあっという間に消え去ってもおかしくない。加計学園問題などを見ていると、自民党の独裁が続く日本も同じ状況に陥ってもおかしくないよな〜とため息。ただし、この映画は最後に希望の種を残してくれた。発芽に大いに期待したいし、私も発芽しなきゃダメだなと自省しました。

この短評にはネタバレを含んでいます
なかざわひでゆき

決して他人事ではない香港の10年後を占う5つの物語

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 学生を中心とした’14年の反政府デモ「雨傘運動」の記憶も新しい香港。今年7月には親中派とされる新行政長官が就任し、香港の自由と人権はさらに不透明なものとなりつつある。5人の若手監督が10年後の香港を予想したオムニバス映画である本作には、そんな香港市民の将来に対する不安が如実に反映されていると言えよう。
 そこから垣間見えるのは、市民の分断や言論統制、中央政府の干渉など、香港社会が既に抱えている問題の数々。それは、共謀罪や憲法改正に揺れる日本、トランプ政権下で混乱するアメリカなど、世界情勢の今とも多くの点で重なる。この暗い未来予想図を避けるためにはどうすればいいのか。深く考えさせられる映画だ。

この短評にはネタバレを含んでいます
ADVERTISEMENT

人気の記事

ADVERTISEMENT

話題の動画

ADVERTISEMENT

最新の映画短評

ADVERTISEMENT