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ゲット・アウト (2017):映画短評

ゲット・アウト (2017)

2017年10月27日公開 104分

ゲット・アウト
(C) 2017 UNIVERSAL STUDIOS All Rights Reserved

ライター7人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4.1

なかざわひでゆき

今の米国社会に漂う「空気」が感じられるアイディア賞ホラー

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 とりあえず着眼点が素晴らしい。主人公は白人女性と付き合っている黒人男性。彼女の里帰りに付き合って、白人ばかりの田舎町へ足を踏み入れるわけだが、どうも何かがおかしい。住民は過剰なまでに黒人のことを持ち上げるし、使用人として働く黒人たちの態度も不可解だ。案の定、この町には恐ろしい秘密が隠されている…。
 マイノリティが本能的に感じる不安を逆手に取り、まるっきり意表を突く方向へと展開していくストーリーに驚かされる。これ以上はネタバレになるので詳しくは述べないが、今のアメリカ社会に漂う「空気」というものを、ホラー・エンターテインメントとして見事に昇華していることは確か。なかなか上手い。

この短評にはネタバレを含んでいます
森 直人

これは完璧ですねえ

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

いや~、久々に「読めなかった」ですわ。不穏なサスペンスを醸成する巧さに加え、こちらの先入観を超えてくるところが真のミステリーだなと。下敷きが『招かれざる客』ってことはよく指摘されているが、そのレファレンスすらも微妙なミスリードとして働いている感がある。ああ、ネタバレという言葉は好きじゃないけど、コレは本当それ厳禁!

ざっくりしたことだけ書くと、ファッションアイテムなど細部も綿密で手抜かりなし。高度かつ下世話さも忘れていない。全体としてはブラックムーヴィーとホラーとブラックコメディが政治性や風刺性を接点に繋がることを教えてくれた。トランプ政権下を象徴する一本としても歴史的に記憶されるだろう。

この短評にはネタバレを含んでいます
清水 節

差別される者の実感に、黒い笑いを交えた恐怖映画の新機軸。

清水 節 評価: ★★★★★ ★★★★★

 相手はゴーストやクリーチャーじゃない。恐怖映画の新機軸だ。白人家庭に招かれた黒人青年の視点を通し、表面的にはリベラルを装う人々の心理が、薄皮を剥ぐようにして明らかになっていく。偏った理念に基づく、許されざる異常な行動。しかし絵空事とは思えない。黒人コメディアンのジョーダン・ピール監督が、経験に基づきダークな笑いを交え、切れ味鋭く社会批判を繰り出す。被差別者が味わう陰湿な空気をVRよろしく体感させ、エンターテインメントにまで昇華させている。分断が深まるアメリカだが、こうした形で表現が行われ、受け入れられることは見事だ。日本にも潜む同質のテーマ。このタッチのフォロワーは出現するだろうか。

この短評にはネタバレを含んでいます
相馬 学

人種差別のストレスが意外な恐怖に発展する快作

相馬 学 評価: ★★★★★ ★★★★★

 ひと言でいえば、アメリカ社会の人種差別の根深さを見据えたスリラー。しかし社会派の要素は根底にあるに過ぎない。その面白さは、意外性に尽きる。

 白人の恋人の実家に赴いた黒人青年が体験す恐怖は、レイシズムすれすれの周囲の言動によってストレスとなって積み重なる。とはいえ単なるサイコスリラーでもなく、催眠術の逸話が語られるや話は意外な方向へ。鮮血の後半にいたり、何やらトンでもないモノを見てしまった…という感覚に襲われる。

 こんな犯罪が現実的に可能かどうかはわからないが、そういう点を含めて足元の不確かさにゾクゾクさせられる快作。意外性を満喫したいなら、前情報をシャットアウトして臨むべし。

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くれい響

今年の『ドント・ブリーズ』枠!

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

“モダンホラー版『ミート・ザ・ペアレンツ』”というより、“逆『ゲス・フー/招かれざる恋人』”。DVDスルーだった『キアヌ』でも笑わせてくれたジョーダン・ピールを監督として起用したジェイソン・ブラムの目利きは、さすがの一言だ。オバマからトランプ政権になった現代アメリカにおいて、このテの人種差別ネタを笑いを交えて描けるとは、とんでもない逸材だろう。シンプルなストーリーながら、ジワジワと迫ってくるサスペンス演出も、地味なキャストの芝居も巧く、冒頭に車で轢かれる鹿に始まり、ティーカップ&スプーンや帽子など、脚本も伏線だらけ。リピートしたくなる点など、今年の『ドント・ブリーズ』枠は、これで決まり。

この短評にはネタバレを含んでいます
平沢 薫

人種差別をホラー映画形式で描く知能犯な1作

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 人種差別モチーフを、シリアスな社会派映画ではなくホラー映画のフォーマットで、かつポリティカル・コレクトネスに抵触しない形で描く、知能犯な1作。そのうえストーリーにひねりがあって、途中からミステリ要素も入ってくる。製作が「パラノーマル・アクティビティ」「パージ」など技のある低予算ホラー映画を全米大ヒットさせたブラムハウス・プロダクションズなのも納得。
 監督・脚本はアフリカン・アメリカンで「キアヌ」などの俳優としても活躍するジョーダン・ピール。ティーン向けホラー形式の本作が全米で大ヒットしたという事実が、さまざまな差別意識が今も根深く身近な問題であることを再認識させる。

この短評にはネタバレを含んでいます
猿渡 由紀

見終わった後もう一度見たくなるし、そうするべき

猿渡 由紀 評価: ★★★★★ ★★★★★

見ている間、ずっと居心地が悪い。クライマックスで、どうしてそう感じたのかがわかると、すべてがいかによく考えられていたのか、そして役者たちがなんとうまかったのかに感心させられ、また見たくなってしまう。実際、筆者は二度見て、あらためてすごいと思った。 表面的なストーリーだけでなく、奥に潜む社会的な要素がまた、独特の怖さを作り上げている。そんな中に絶妙な形で笑いまで入れ込んだのだから、なんともお見事 。さらに、悲しさを感じさせもするのだ。間違いなく2017年の最高の作品のひとつに入る、大傑作である。

この短評にはネタバレを含んでいます
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