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オン・ザ・ミルキー・ロード (2016):映画短評

オン・ザ・ミルキー・ロード (2016)

2017年9月15日公開 125分

オン・ザ・ミルキー・ロード
(C) 2016 LOVE AND WAR LLC

ライター3人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4.3

なかざわひでゆき

クストリッツァ映画の醍醐味溢れる狂乱の生命賛歌

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 エミール・クストリッツァ久々の長編劇映画だが、戦争や死という暗く重いテーマを取り扱いつつ、溢れんばかりのバイタリティと人を食ったようなユーモアで謳いあげられる、大らかで慈愛に満ちた生命への賛歌は依然として健在だ。
 今回は戦時下の某国で繰り広げられる中年男女の恋の逃避行。牧歌的な田舎を舞台に個性的な奇人変人や愉快な動物たちが入り乱れ、情熱と哀切のバルカン・サウンドがかき鳴らされるお祭り騒ぎの中で、暴力的なリアリズムと詩的なファンタジーが交錯していく。
 マンネリと言われればそれまでだが、しかしこれこそクストリッツァ作品の醍醐味。少女のような瑞々しさを兼ね備えたモニカ・ベルッチも素晴らしい。

この短評にはネタバレを含んでいます
くれい響

南へ走れ、ミルクの道を!

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

エミール・クストリッツァ監督自身が主演し、ボンドガール以上に身体を張ってるモニカ・ベルッチ演じるヒロインと恋に落ちる設定だけに、嫉妬も含め、一部ではいろいろ言われているようだが、そんなことも気にならないぐらい、相変らずエネルギッシュでパワフルな9年ぶりの新作。壊れかけの古時計、『フラッシュダンス』を踊る女、ムツゴロウさんばりな熊との戯れなどのスラップスティックな描写に、結婚式を彩るバルカン・サウンドと、ファンを裏切らないゴッタ煮感は健在。さらに、特殊部隊に立ち向かいながら愛の逃避行を繰り広げる後半パートでは、クストリッツァ史上最強といえるブラックな描写もあり、人間悲喜劇としての見応えは十分だ!

この短評にはネタバレを含んでいます
森 直人

シンプルに純化されたクストリッツァの活動写真

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

『ジプシーのとき』から『アンダーグラウンド』『黒猫・白猫』に至る独創の形成がクストリッツァの青年期~壮年期だとしたら、完成したスタイルを自らの原点に向かい、ある種の透明性に戻しているのが以降の流れだと思う。今回ついに監督&主演=「自作自演」で、彼の無声活劇/喜劇志向が全開になった。過去にオマージュを捧げていたチャップリンや、キートン、ロイドばりのドタバタ劇を全身全霊で生きてみせる。

もちろん映画全体で奏でられるのは祝祭と破壊が渾然一体となったボリュームたっぷりのバルカン狂騒曲。これだけハイエナジーのボーイ・ミーツ・ガール(!)に付き合ったM・ベルッチに拍手。『鶴は飛んでゆく』の引用も泣ける。

この短評にはネタバレを含んでいます
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