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猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー) (2017):映画短評

猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー) (2017)

2017年10月13日公開 140分

猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)
(C) 2017 Twentieth Century Fox Film Corporation

ライター7人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4.1

清水 節

愚かな人間を突き放し、猿に未来を託すアイロニカルな神話

清水 節 評価: ★★★★★ ★★★★★

 旧約聖書や数々の戦争映画の記憶をちりばめ、猿と人間の戦いを描く三部作は、現代の映し鏡だ。ウディ・ハレルソン扮する大佐に集約されるのは、対話なき圧力であり、力にのみ訴えるプリミティブな本能。猿の統率者シーザーに象徴されるのは、知性と“人間性”。VFXであることも忘れ、猿の自然な演技には見入るばかり。少女ノヴァの存在が、原点への繋がる構成が心憎い。1968年に始まるオリジナル版では、全面核戦争で滅ぶ人類を嘆き、猿の台頭を恐れたが、2010年に始まるこの三部作は一転、軽やかな活劇から徐々に重厚感を増し、愚かな人間を突き放して諦観し、猿の可能性に世界の未来を託すアイロニカルな神話となった。

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なかざわひでゆき

オリジナル1作目へと繋がる壮大な戦争叙事詩

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 いよいよ人類VS類人猿の全面戦争が佳境を迎える、『猿の惑星』リブート版シリーズ第3弾。『戦場にかける橋』や『地獄の黙示録』、『十戒』に『大脱走』などなど、往年の名作映画にインスパイアされつつ、オリジナル・シリーズの根底にも流れていた反戦メッセージを改めて全面に押し出す壮大な戦争叙事詩として仕上げられている。
 さすがにシーザーをモーゼに見立てた「出エジプト記」的プロットはやや陳腐にも思えるが、しかしオリジナル1作目の世界観へと巧みに繋がっていく仕掛けを含め、工夫の凝らされたストーリー展開は見応え十分。次なる第4弾も計画されているらしいが、個人的には潔くここで終止符を打ってもいいと思う。

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斉藤 博昭

悲しみと怒りは、荘厳な美しさに帰結する

斉藤 博昭 評価: ★★★★★ ★★★★★

前2作まではアンディ・サーキスがパフォーマンス・キャプチャーで「演じている」という実感がどこかにあった。しかしこの3作目は、彼の幻影は完全に消え、シーザーというキャラクターそのものに強烈に感情移入させる。今作から可能になったロケーションでのキャプチャーなど技術的進化のせいもあるが、何より、冒頭でシーザーに見舞われる悲劇の切実さが胸の奥に深く沈殿し、もはや人間側に同情する余地は皆無になってしまうのだ(そこが少し不満ではあるが…)。
バッドエイプの絶妙なコメディリリーフ、西部劇・脱獄映画など数々のアクション作品を踏襲する演出に感心しまくり、虚をつかれるほど荘厳で美しいラストの情景に耽溺した。

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山縣みどり

これは、エイプ版の出エジプト記!

山縣みどり 評価: ★★★★★ ★★★★★

前作で「猿は猿を殺さない」掟を破って葛藤するシーザーをさらなる悲劇が襲い、自殺行為とも思える戦いへと向かう。共存はありえない状況で仲間のために命をかけるシーザーの揺れる心模様がドラマティックだ。捕虜虐待の様子が『戦場にかける橋』やユダヤ人収容所を彷彿させ、人類の残虐性や差別意識に悲しくなる。そんな人類にNOを突きつけるシーザーはエイプ界のモーゼであり、これは彼らの出エジプト記なのだ。演じるアンディ・サーキスが素晴らしく、アカデミー協会には早くモーションキャプチャー部門をもうけてほしいもの。シーザーの次男コーネリアスや孤児ノヴァが登場し、1968年製作の『猿の惑星』へとつながるあたりにニヤリ。

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くれい響

確かに有終の美だが、あまりにシブすぎる。

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

愛する妻と子を人間に殺害されたシーザーの苦悩と葛藤を通し、すべてが『1968年版』に繋がる「新シリーズ最終章」。それだけに、アンディ・サーキスの熱演は尋常じゃなく、モーションキャプチャー技術とともにエラいことに! さらに、イーストウッドの『アウトロー』を意識したロードムービーであり、待ち受けるのは『地獄の黙示録』のカーツ大佐と化したウディ・ハレルソンとのガチバトル。そして、現代アメリカに対する強烈な批判と、とにかくヘヴィの一言。『68年版』のノバの少女時代と思われるキャラを導入するなど、ドラマティックな展開も用意されているが、『猿の惑星: 創世記』支持派からすれば、あまりにシブすぎる感もある。

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猿渡 由紀

これぞ、理想のハリウッド映画!

猿渡 由紀 評価: ★★★★★ ★★★★★

金ばっかり使ったつまらないハリウッド映画には、誰だってしょっちゅううんざりさせられている。だが、それらのお金をストーリーに最も有効な形で使い、ほかの国では絶対実現できない映画にしてみせる例も、たまにある。この三部作は、まさにそれ。 1作目では、人間レベルの知能を持って生まれた猿のシーザーの葛藤にどっぷりと引き込まれた。2作目で、シーザーは、人間の愛を知っている彼ならば選ばなかった戦いを、受け入れざるを得なくなる。この完結作は、これまで同様、胸が痛くなるのだが、新しく登場する猿が笑いを提供してもくれる。 「猿の惑星」というタイトルをあらためて意義づけもする、すばらしい作品。

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平沢 薫

猿が人間を支配する世界ができた理由に納得がいく

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 '68年製作のシリーズ第1作「猿の惑星」を見て疑問に思ったことの数々が、とてもクリアに解明されていく。なぜ猿が人間を支配する世界ができたのか、なぜ人間の社会は滅び、猿の社会は発達することができたのか。2つの社会の基盤の違いは何だったのか。なぜ人間は言葉を失い、猿は言葉を使うことができるのか。これらの疑問への答が描かれ、その答に納得がいく。そして、その物語の大きさに呼応して壮大な光景が描かれる。
 ちなみに本作と前作「猿の惑星:新世紀」の監督・共同脚本を担当したマット・リーヴスの次回作は、ベン・アフレックが監督するはずだったバットマンの単独映画。この監督がどんなバットマンを描くのか気になる。

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