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ブレードランナー 2049 (2017):映画短評

ブレードランナー 2049 (2017)

2017年10月27日公開 163分

ブレードランナー 2049

ライター8人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4.8

ミルクマン斉藤

華麗にスルーな「デッカードは実はレプリカント?」説。

ミルクマン斉藤 評価: ★★★★★ ★★★★★

ブロックバスター的目配せ一切なし。いっそアート映画として観たほうがいい感じ。オリジナルへの目配せは冒頭からいっぱいだが、真のオリジネイターで本作も手掛けるD.ファンチャーの脚本は「人間とは何か?」というテーゼを突き詰め、真っ向勝負で挑んでいく(アイデンティティの淵に立たされるレプリカントのAIの恋人もいじらしくて可愛い)。ヴィルヌーヴもオリジナルの延長線上にある未来を的確に表現、やりすぎてないところが凄いし、とりわけ彼が得意な流体の表現はもう悶絶だ。とはいえ、最高に素晴らしいのはロジャー・ディーキンスのキャメラ。記憶の深淵を探る話だから真っ暗に近いシーンもやたらあるけれど。

この短評にはネタバレを含んでいます
なかざわひでゆき

巨額の製作費を投じた壮大な芸術作品

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 相変わらず名作映画のリブートやら続編やらが跡を絶たない昨今のハリウッド。その多くが期待外れや企画倒れに終わってしまうのが現実だが、しかし本作は別格だ。もはや次元が違うと言ってもいいだろう。
 35年前にリドリー・スコットの作り上げた非の打ちどころのない世界観を踏襲するばかりか、さらにその先の先を行く先鋭的な映像美で観客を圧倒し、人間性の模索という普遍的なテーマをより深く掘り下げていく。
 言うなれば、巨額の製作費を投じた2時間43分の壮大な芸術作品。それだけでも今のハリウッドでは奇蹟だ。こだわり抜いたサウンドデザインも素晴らしい。是非とも映画館の大音響で堪能して欲しい。

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清水 節

「2049年ピノキオの旅」それは孤独な自分探しの切実な叙事詩

清水 節 評価: ★★★★★ ★★★★★

  前作の謎に回答しつつ、根幹に曖昧さを残す巧妙な展開。170億円かけたエンターテイメントとアートの融合は、タルコフスキーやナボコフを引用しながら描く「2049年ピノキオの旅」だ。砂嵐が吹きすさび雪の舞い散る死にゆく世界で、感情を標準装備しても魂の虚ろな者が、不確かな記憶をよすがにアイデンティティを求めて彷徨う。独り苦悩し慰撫する主人公は、現実が侵食され身体性が希薄でディスコミュニケーションな我々に似ている。人間よりも人間らしい者たちが不意に流す涙が切ない。愛と人間性を問いかける実存的テーマは前作以上に深い。ディストピアSFとしてよりも、自己探求の切実な叙事詩として永く語り継がれることだろう。

この短評にはネタバレを含んでいます
相馬 学

レプリカントに孤独な“人間”をみる

相馬 学 評価: ★★★★★ ★★★★★

 レプリカントが現代の人間のように思える場面は前作にもあったが、この続編はそれがより強い。理由は、主人公Kの内面が表現されているからだろう。

 バーチャルにロマンスのような慰安を求めたり、落胆したり、意志によって行動したり。そこにいるのは、もはや感情のないマシンではない。劇中では“奇跡”と表現される進化の賜物か。ともかく、差別され、疎まれるこのキャラに、人間的な孤独が見えてくる点がいい。

 もちろんこれは一面的な見方で、創造主の哲学をはじめとする思想性や、圧倒的な映像美など見どころは多い。が、不覚にもラストに涙した身としては、この豊潤な傑作の“人間ドラマ”の部分をアピールしておきたい。

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山縣みどり

人間が考える葦ならレプリカントは?

山縣みどり 評価: ★★★★★ ★★★★★

35年前の公開後から何度も企画された続編がついに実現! 壮大にしてスタイリッシュな映像美や躍動感あふれるアクションで包み込んだ深遠な問題提起––アイデンティティが意味するものや人間性、ひいては人生とはなんたるか?––は前作から引き継がれている。より哲学的な印象が強いと感じたのは、『メッセージ』のD・ヴィレヌーヴ監督という刷り込みのせいかも。ライアン・ゴズリング演じるKの物語と前作の最後に姿を消したデッカード&レイチェルの物語が非常に巧みにつながった。ただし謎めいた科学者ウォレスの物語は決着せず、「続くの?」と思った次第。レプリカント開発で神の領域に達したがっている彼の野心の行方が気になる。

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くれい響

“知る覚悟はあるか”はマニアに向けた警告でもある。

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

年号が付いたことで、アルバトロス感強めだが、ここまでやられると、ぐうの音も出ない。そのスゴさは同じハリソン・フォードのハマリ役復帰作『フォースの覚醒』と比較すれば一目瞭然。“歴史は繰り返す”テーマの下、マニアが観たい場面で構成したJ・Jに対し、ヴィルヌーヴはマニアが観たい観たくないに関わらず、完全な続編で挑んだ。話題になった“デッカード=レプリカント説”を嘲笑うかのように主人公Kがレプリカントである設定を筆頭に、神格化された前作にザクザク切り込んでいく。まさに“知る覚悟はあるか”のコピーそのものだが、これが観たかった、そしてリドリー・スコットが撮ってもおかしくない続編なのだから敬服しかない。

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斉藤 博昭

映画史上最高の続編かもしれない

斉藤 博昭 評価: ★★★★★ ★★★★★

すでに伝説となっている物語の「続き」に、いったい何を期待すればいいのか? しかし35年を経て出現したこの続編は、最初から最後まで極上アートのような映像と、前作の世界観を受け継ぎ、広げる強靭な意識によって、2時間43分、恍惚とした時間に浸らせてくれた。
そして結末を目の前にしたときの激しい胸のざわめきも言いようがないレベル。人間は何のために生きるのか。虚しさの向こうに人生で待つものは?
『ラ・ラ・ランド』もそうだったが、表情変化の乏しさゆえの果てしない悲しさを表現できるライアン・ゴズリング。その持ち味がここまで巧妙に生かされていたことにも衝撃を受けた。

この短評にはネタバレを含んでいます
平沢 薫

すべての要素がオリジナル作に直結、かつ展開されている

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 全方位対応。気候、風景、ガジェット、キャラクター設定、セリフ、ストーリー---あらゆる要素に、"オリジナル作のあの部分を踏まえてこう展開したのか"と思わせる部分がある。すべてがオリジナル作と直結し、かつアップデートされているのだ。
 そのうえで、ストーリーには監督ドゥニ・ヴィルヌーヴが得意とする物語構造の巧みさ、驚愕の展開がプラスされている。  
 そしてそのすべてが、オリジナル作の向こうにあるその原作小説、フィリップ・K・ディックの「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」のテーマ、"人間を人間たらしめているものは何か"に収束されていく。この原点回帰にこの続編の真髄がある。

この短評にはネタバレを含んでいます
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