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シンクロナイズドモンスター (2016):映画短評

シンクロナイズドモンスター (2016)

2017年11月3日公開 110分

シンクロナイズドモンスター
(C) 2016 COLOSSAL MOVIE PRODUCTIONS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

ライター5人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 3.6

なかざわひでゆき

虐げられた女性の分身=巨大怪獣が世の悪意に立ち向かう

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 モンスターを人間の心理的メタファーとして描く手法は、映画史において必ずしも目新しいものではないが、しかし人間の内なるモンスターを具現化した巨大怪獣が巨大ロボットと戦うという筋書きはかなり斬新だと言えよう。ただし、そうした特撮バトルがメイン・ディッシュではない。
 これは、社会に蔓延る男性優位主義や階級格差によって劣等感を植え付けられた女性が、巨大怪獣という自らの分身を通して世の悪意(=巨大ロボット)に立ち向かい、強く逞しく生まれ変わる姿を描いたシュールなファンタジー。ある意味、『ドニー・ダーコ』などの系譜に属する作品であり、アメリカでコケたのは観客が単純明快なエンタメを期待したからだろう。

この短評にはネタバレを含んでいます
くれい響

じつはホラー要素もある愛憎劇

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

なぜ、日本じゃなく、韓国?という点も含め、SFファンタジーとしても、かなりブッ飛んだ設定だが、怪獣とシンクロた炎上ライターと、巨大ロボットとシンクロした彼女の幼馴染を中心とした、ドロドロな愛憎劇である。まるで舞台劇のような閉鎖された空間に、女1人:男3人の構図、ドタバタしてる割には爆笑に繋がらない狙った笑いなど、いかにも『エンド・オブ・ザ・ワールド 地球最後の日、恋に落ちる』のナチョ・ビガロンド監督の作品らしい。結果的に『レイチェルの結婚』にも近い、いかにもアン・ハサウェイらしい女性映画として着地するが、コメディアンのイメージが強いジェイソン・サダイキスによるホラー芝居も目を見張るものがある。

この短評にはネタバレを含んでいます
清水 節

戦う「大アン・ハサウェイ」の苦悩と葛藤のルーツは「大日本人」

清水 節 評価: ★★★★★ ★★★★★

 職を失い酒に溺れて故郷に帰った、壊れたアメリカ人女性の分身が、巨大怪獣となって韓国に出現し、周囲を犠牲に…。うしろめたさから責任感が芽生える過程が興味深い。内的に問題を抱えたヒロインの克服劇。オスカー女優アン・ハサウェイが演じることでシュールさが増す。原題は「COLOSSAL」=“巨大な”。社会批判のメタファーではなく、『禁断の惑星』のイドの怪物のような、アルターエゴのモンスター化。脚本監督を務めたナチョ・ビガロンドは、松本人志監督作品の影響下にあると公言する。真のルーツは、普通の人間の日常的な葛藤が巨大化した不条理コメディ『大日本人』。邦題は『大アン・ハサウェイ』の方がしっくりする。

この短評にはネタバレを含んでいます
相馬 学

一見、奇想天外、しかし意外にシリアス!?

相馬 学 評価: ★★★★★ ★★★★★

 地球の裏側で大暴れしている怪獣の正体はアタシだった!…という奇想天外な設定。しかし、物語自体が導く先は意外にシリアスで、考えさせるものがある。

 自分が都市を破壊して人を殺してしまったと反省するヒロインはチャーミングだが、反比例するかのように、彼女の幼なじみのバーテンダーが巨大ロボットに自身を託して暴走。一見いい人でも内部にはストレスが蓄積している。ロボットはその象徴だ。

 バーテンダーは“やっと俺にも主役がまわってきた”という。それは捨てたり、諦めてきた夢が、歪んだかたちで噴出したもの。重くないコメディ・タッチは最後まで貫かれるが、都市破壊という行為には悪意の生々しさが見えてくる。

この短評にはネタバレを含んでいます
平沢 薫

アン・ハサウェイだから怪獣でもキュート

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 怪獣映画の形で大人の精神的成長を描く、実は大人向けの1作。アメリカの田舎に引っ越したヒロインが、ソウルの街に出現した巨大怪獣と自分がシンクロしていることに気づく。はたして彼女はどう行動するのか。
 この怪獣がヒロインの近所ではなく遠いアジアの街に出現するのは、被害が直接自分に及ばない時に、どれだけその被害に対して責任を感じるのかを問うためだろう。ヒロインも恋人も幼なじみも、単純な善人でも悪人でもなく、社会人なのにまだいろんな成長が必要な人物なのが、本作の大人向きなところ。仕事で失敗してアルコール依存症の困ったヒロインを、アン・ハサウェイがキュートな応援したくなる人物に演じている。

この短評にはネタバレを含んでいます
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