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ローガン・ラッキー (2017):映画短評

ローガン・ラッキー (2017)

2017年11月18日公開 119分

ローガン・ラッキー
(C) 2017 Incarcerated Industries Inc. All Rights Reserved.

ライター7人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4

清水 節

経済や国家から取り残された者たちがほんの少し輝く姿こそ真骨頂

清水 節 評価: ★★★★★ ★★★★★

 ソダーバーグの引退撤回作は、集団で金庫破りを企てるコミカルな強盗アクション。自ずと彼のヒット作を想起せざるを得ないが、カジノを舞台にドル箱スターが余技で演じてみせた『オーシャンズ』シリーズとは、あらゆる意味で対照的だ。忘れさられたような田舎町で、うだつの上がらぬ者たちが計画する、生活の懸かった不確かな犯罪を通し、人間味あふれる演技を堪能できる。とりわけ007から解き放たれたダニエル・クレイグの非道ぶりと、カイロ・レンことアダム・ドライバーのワンテンポ外した間合いは絶品。決して鮮やかな強奪劇ではない。時代や経済から取り残された者たちが悪戦苦闘の挙句、ほんの少し輝く姿こそが、この映画の真骨頂だ。

この短評にはネタバレを含んでいます
相馬 学

“オーシャンズ”とはひと味違う、犯罪劇の快作

相馬 学 評価: ★★★★★ ★★★★★

新人女性脚本家の仕事とは思えないほどオフビートのユーモアやヒネリが効いていて、ソダーバーグに取材した際に“あなたが匿名で書いたのでは?”と尋ねたが、本人は否定。

 ともかく実によくできている。犯罪計画の行方は、素人集団らしい失敗と運がほどよくブレンドされ、スリルと笑いを醸し出す。キャラクターも面白いが、とりわけダニエル・クレイグと、その弟たちの型破りなキャラは絶品。“大義がなければ悪事には手を貸さない”というトボけたコダワリに笑った。

 同じソダーバーグ作品『オーシャンズ11』が、しばし引き合いに出されるが、庶民を主人公にしている分、共感も引き寄せられる。父娘の情愛エピソードも活きた快作。

この短評にはネタバレを含んでいます
なかざわひでゆき

弱者の悲哀も浮かぶ負け犬版『オーシャンズ11』

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 言うなれば、田舎の負け犬版『オーシャンズ11』。離婚やリストラで人生ドン詰まりの主人公が仲間を集め、一発逆転を狙って現金強奪作戦の賭けに出る。
 綿密に練られた強奪計画の大胆さと面白さはオーシャンズも顔負け。作戦成功のカギを握る爆破師の脱獄計画も同時進行で絡む。脚本の出来栄えが素晴らしい。一癖も二癖もあって、いまひとつ信用ならない仲間たちのユニークなキャラも抜群に光る。
 浮き彫りにされるのは、コツコツと真面目に努力しても報われず、社会の底辺から抜け出そうにも抜け出せない庶民の悲哀。もちろん、だからといって犯罪が許されるわけではないが、そこもきっちりとフォローされているところが心憎い。

この短評にはネタバレを含んでいます
山縣みどり

もしもチャンがスターになってなかったら?が想像できるよ

山縣みどり 評価: ★★★★★ ★★★★★

スティーブン・ソダーバーグ監督のハリウッド復帰作らしく人気スターがご祝儀共演する華やかな強盗コメディは、しっかりと練り上げられた脚本が勝利の要。強盗ものに必須の隙のない犯罪計画をはじめ、主要キャラを取り巻くドラマや関係性、爆笑のコミック・リリーフとほぼ完璧。さらには舞台となる南東部の貧困を感じさせる設定も用意し、主人公ジミーの境遇を強調する。怪我でアメフト選手の夢を断たれ故郷に戻った主人公は、演じるC・テイタムと重なる部分も多く、彼がハリウッド入りしなかったらジミーみたいになっていたかもと思うほど。意外なお笑いセンスを披露するD・クレイグも魅力的だし、S・マクファーレン周りは鉄板の面白さ!

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くれい響

ぶっちゃけ、『オーシャンズ』より面白い!

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

どこか『ワイスピ』感もあるポスターヴィジュアルながら、そこはネタにもしてしまうソダーバーグ監督復帰作。『パターソン』に続き、もっさり感満載のアダム・ドライバーに、『レイヤー・ケーキ』の頃の狂気を感じさせるダニエル・クレイグら、芸達者な役者それぞれに見せ場を用意、爽快なタネ明かしまで楽しませるオフビート・コメディとして見応え十分だ。こちらもネタにしている『オーシャンズ』シリーズのような派手さや、スピード感はないものの、ない知恵を振り絞り、アナログなテクで強盗計画に挑む愛すべきダメ人間たちへの賛歌として、コーエン兄弟らしさもあり、ソダーバーグに思い入れのない方が心底楽しめる気もする。

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平沢 薫

濃いキャラ同士のぶつかり合いが楽しい

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 個性派キャラが集まって強盗計画、という設定は本作のソダーバーグ監督自身の「オーシャンズ」シリーズと同じだが、本作の首謀者であるローガン家の兄弟妹は盗みのプロでもなんでもなく、かなりアブナい性格なので、ドラマ展開はまったく違う。見事な計画にアクシデントが起きるのではなく、その計画自体がどういうものなのかが、少しずつ明らかになっていくという趣向だ。
 さらに見ものなのが濃いキャラクター同士のぶつかり合い。他作品での役を重ねると、ガンビットとカイロ・レンが兄弟で仲間が007、ウィンター・ソルジャーもちらっと登場の豪華さ。中でもダニエル・クレイグの007のクールさとは真逆の怪演ぶりが楽しい。

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森 直人

冴えた脚本、役者、選曲でソダーバーグ、万全のカムバック!

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

『フリー・ファイヤー』に続き肝はジョン・デンバー! 彼がファット・シティの二人と名曲「カントリー・ロード」を作った経緯の冒頭ネタから吸引力抜群。テイタム&ドライヴァー(ボブ・シーガーのTシャツ着てたり)の異色バディ感、007の反動のような極悪クレイグも最高。まさに上質の娯楽映画!

ユナボマー、リアーナ、『ゲーム・オブ・スローンズ』など、雑多な固有名詞の鏤め方を含めてタランティーノ調とも言えるが、同時にアルトマン的諧謔(リアン・ライムスの愛国歌!)もあり、これを完璧にこなせるのは祝・引退宣言撤回のソダーバーグしかいないという結論。ヒネリの利いた構造で本領発揮、『オーシャンズ』より何倍も面白い。

この短評にはネタバレを含んでいます
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