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殺人者の記憶法 (2017):映画短評

殺人者の記憶法 (2017)

2018年1月27日公開 118分

殺人者の記憶法
(C) 2017 SHOWBOX AND W-PICTURES ALL RIGHTS RESERVED.

ライター4人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4.3

清水 節

さらに凄みを増したソル・ギョングの本能的悪魔に魅せられて

清水 節 評価: ★★★★★ ★★★★★

“クズども”を始末してきた殺人者。記憶が失われつつある彼の病は、罪悪感から逃れる効果をもたらすが、同時にアイデンティティ喪失を食い止めようともがいている。人は失われゆく情熱や情念を甦らせ老いと闘う現実を思えば、特殊な物語とはいえない。熟練のメソッド演技で臨むソル・ギョングは、さらに凄みを増した。『メメント』的な逆時系列の直線構成とは程遠く、記憶は途切れ途切れになり混濁もする。愛娘の前に現れたキム・ナムギルが醸し出す、生理的な嫌悪感が見事。本能的な悪魔と狡猾な悪魔の知略と肉体バトルが見せ場だ。大方の日本映画が狂気に関してアルツハイマー状態に陥っていることを突きつけられる、激烈な韓国映画でもある。

この短評にはネタバレを含んでいます
相馬 学

絶妙の設定はもちろん、役者の入れ込みにも唸る

相馬 学 評価: ★★★★★ ★★★★★

 主人公のアルツハイマーと、連続殺人犯だった暗い過去、愛娘への愛情、一見善良な警官の殺人の欲求。それらを絡めて、スリルを発生させる仕掛け。これは設定の勝利だ。

 記憶の不確かな老人よりも若い警官の方が信用されるのは当たり前で、それが主人公の苦境に拍車をかける。韓国映画では度々唸らされるが、閉鎖性を含めた田舎の土着的な空気が活きている点もイイ。

 それにしてもソル・ギョングの役への没入はこれまで以上で、驚かされる。体重を10キロ以上減らしたというが、49歳の実年齢からほど遠い“老体”の作りこみに唸った。若くてイケメンの敵役キム・ナムギルとの絵的な対比も巧い。

この短評にはネタバレを含んでいます
なかざわひでゆき

韓国映画のシリアルキラー物にハズレなし!

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 『殺人の追憶』に『悪魔は見た』『殺人の告白』など、韓国映画のシリアルキラー物にハズレなしといった感じだが、本作もまさにその証拠と呼ぶべき力作だ。
 基本は殺人鬼VS殺人鬼の激突。今は一人娘と平穏な生活を送る元連続殺人鬼ビョンスが、若い女性を狙う新たな連続殺人鬼の犯行を食い止めようとするわけだが、問題はビョンスがアルツハイマーを患っていることだ。しかも敵は警察官。あまりにも分が悪い。
 途切れる記憶を手繰り寄せながらのサスペンスは『メメント』さながらだが、現実と妄想が入り混じる中でビョンスの忘れていた過去も掘り起こされ、予想外の結末へとなだれ込んでいく展開は見事。人間ドラマとしても秀逸だ。

この短評にはネタバレを含んでいます
斉藤 博昭

韓国版『メメント』? 目の前の事件の「不確かさ」も巧妙

斉藤 博昭 評価: ★★★★★ ★★★★★

記憶をなくすので、自身の行動をメモにとり、録音する主人公が犯罪に巻き込まれる……という設定は、『メメント』と重なる。その意味で今作も観客を混乱させるシーンがいくつか登場する。これは実際に起こったことか。主人公の記憶違いか。あるいは夢か妄想か……。しかしこの混乱こそが、主人公の感覚と一体化させるわけで、映画の目的は見事に達成されている。

やつれ具合が凄まじいレベルのソル・ギョングにも驚くが、娘の恋人になる警官役のキム・ナムギルの、爬虫類を思わせる薄気味悪さは、観る者の心に「しこり」となって沈殿する。物語における立ち位置を理解し、異様な存在感で最適な演技をみせた、これは好例と言える。

この短評にはネタバレを含んでいます
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