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ぼくの名前はズッキーニ (2016):映画短評

ぼくの名前はズッキーニ (2016)

2018年2月10日公開 66分

ぼくの名前はズッキーニ
(C) RITA PRODUCTIONS / BLUE SPIRIT PRODUCTIONS / GEBEKA FILMS / KNM / RTS SSR / FRANCE 3 CINEMA / RHONES-ALPES CINEMA / HELIUM FILMS / 2016

ライター4人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4.3

清水 節

ティム・バートンは闇を愛したが、クロード・バラスは光へ向かう

清水 節 評価: ★★★★★ ★★★★★

 ストップモーションアニメは、孤独や切なさを伝える上で最良の表現手法であることを、改めて思い知る珠玉の名編。微細な表情で人形に生命を吹き込み、繊細な心の動きを伝える。心に傷を抱えた子供たちが孤児院にいる。そこは悲しみの吹き溜まりではなく、孤独が癒され、生の歓びを知り、甦る場だ。色とりどりのキャラクターの見開いた眼に、生命力が漲る。同時代の観客にはこう伝えたい。この映画の優しさは、どこか坂元裕二脚本に通底する。『anone』の少女ハリカから目が離せない人は、今すぐズッキーニに会いに行ってほしい。かつてティム・バートンの人形アニメは自ら「闇」を愛したが、クロード・バラスは希望を抱き「光」へ向かう。

この短評にはネタバレを含んでいます
くれい響

肝は女流監督による脚本にアリ!

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

キュートなキャラから、単なるフランス産ストップモーション・アニメと思うなかれ。なんたって脚本を書いたのは『水の中のつぼみ』、そして映画祭上映のみで終わった秀作『トムボーイ』の監督、セリーヌ・シアマである。孤児院という、今度も小さなコミュニティを舞台に、前記の2作同様、子供たちの繊細な心理や性への目覚めなどが描かれていく。そして、どこか牧歌的な雰囲気に、厳しい現実を叩きつけるドラマ、子供たちが扶養手当目当ての女を出し抜こうとする展開ではサスペンス・タッチも健在だ。技術的には『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』にかなわないが、妙に生々しいオトナのラブシーンなど、インパクトでは引けをとらない。

この短評にはネタバレを含んでいます
斉藤 博昭

ストーリーと表現が、完璧にマッチした奇跡

斉藤 博昭 評価: ★★★★★ ★★★★★

心から抱きしめ、人生の宝物にしたい作品。
ストップモーションアニメという点では、『ウォリスとグルミット』などのアードマン作品や、記憶に新しい『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』に比べ、やや動きがぎこちなかったりする。でもそれも狙いだろう。人形が体現する「もどかしさ」や「所在なさ」が、この物語に最上の表現方法だと実感する。

孤独な子供同士の微妙な人間関係。将来への漠然とした不安は、実写で天才子役が演じたとしても、ここまで感情移入できないだろう。ミリ単位で変化する人形の表情が、他人には打ち明けられない思いをスクリーンに刻む。窓から射し込む光など、子供たちの心を反映すべく、計算された背景も芸術の域。

この短評にはネタバレを含んでいます
平沢 薫

人形素材の柔らかさは9歳の少年の心と同じ

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 人形アニメで描かれる人物たちの身体を形作る素材が、粘土のような柔らかさと湿り気を感じさせて、彼らの心もまた粘土のように、少し触れただけで跡がつき形が変わってしまうことが伝わってくる。人物の顔の造形が、基本形は同じで細かな違いが個性となっているのも、彼らの心理のありようをそのまま形にしたものだろう。孤児たちの暮らしを描く本作は、子供の心理を単純化しない。むしろその多面性を描く。9歳の主人公は心から母の死を悲しみつつ、母が生きていたら陥っただろう不幸も認識している。罪悪感に苛まれ、孤独に苦しみつつ、女の子に心がときめき、雪遊びに心が弾む。人形たちが、人間たちの脆さと強靭さを鮮やかに描き出す。

この短評にはネタバレを含んでいます
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