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犬ヶ島 (2018):映画短評

犬ヶ島 (2018)

2018年5月25日公開 101分

犬ヶ島
(C) 2018 Twentieth Century Fox Film Corporation

ライター8人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4.5

ミルクマン斉藤

すんごい豪華VC!でも松田龍平翔太や山田孝之、いた?

ミルクマン斉藤 評価: ★★★★★ ★★★★★

どうして犬なのか日本なのか。まぁどちらもよほど好きなんだろうな、と想像するしかないが、稀有なパペット・アニメーションであることは誰も否定しないだろう。ウェス・アンダーソンの箱庭的傾向は確かにこのタイプのアニメと相性がいい。日本ネタのパペット・アニメでは『KUBO』があったが、CGと区別つかんようなあの精緻さとは逆の“人形使ったストップモーション”らしい風合いを重視、重く垂れこめる雲や乱闘ドタバタの埃を表現する綿まで魅力的。作中の“日本”もリアルではなく丸尾末広/古屋兎丸っぽい“偽・戦前戦中”ふう。『酔いどれ天使』で有名な服部良一の名曲「小雨の丘」までアコギで流れてイイんだよこれが。

この短評にはネタバレを含んでいます
なかざわひでゆき

日本文化への愛と日本社会への警鐘が同時に感じられる

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 江戸・明治・大正・昭和が混在する摩訶不思議な近未来ニッポン。確かに独特の合わせ技は奇抜だが、しかし一つ一つのパーツを見ていくとウェス・アンダーソン監督が日本文化を極めて正確に熟知していることが分かる。オモチャ箱をひっくり返したような賑やかさも楽しい。視覚の情報量が多いため目で追うのもやっとだが、それゆえ繰り返し見るたびに新しい発見があるはずだ。
 大衆を巧妙に欺き権力を私物化する独裁者に少年と犬たちが反旗を翻す物語には、フランク・キャプラの昔から変わらぬアメリカ映画の良心とトランプ時代への風刺が感じられる。それは、現代日本社会の全体主義的な戦前回帰の風潮に対する警鐘とも受け取れるだろう。

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山縣みどり

カリカチュア? ホワイトウォッシュ? でも無問題!

山縣みどり 評価: ★★★★★ ★★★★★

ポスタービジュアルの少年を見て「動いたら可愛いかも?」と思ったけど、否。ただし犬の人形はチャーミングで、キャラも立っている。そして、この寓話はウェス・アンダーソン監督の政治意識が盛り込まれている点でも興味深い。犬が島は一種の収容所だし、猫LOVEな市長はトランプ風、しかもセーラー服のJKは学生運動で堂々主張! 愛犬を探す少年の冒険譚は陰謀がらみの社会問題へと肥大化し、どう決着をつけるのか最後までワクワクした。欧米では日本文化を正しく伝えていないとか、ホワイトウォッシュとの批判もあったようだが、ロボットレストランを誇る国の人間としては無問題。ゆる〜い和風キッチュをしっかり堪能しました。

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清水 節

ウェスの異常な愛情〜人形たちが織り成す繊細な“日本映画愛”

清水 節 評価: ★★★★★ ★★★★★

いつか見た日本映画の中の光景が、極めて繊細なストップモーション・アニメの未来都市として現出する。為政者によって強制的に島に隔離された愛犬を、一途な少年が犬たちと共に探しに行く冒険譚。その世界はどこか、弱き者が抑圧された今現在の日本のようでもある。黒澤映画の強烈な匂い、宮崎アニメのただならぬ気配、めくるめく浮世絵の美意識…。単なる引用ではない。細部にまでこだわり抜き、構図・撮影・美術・音楽に至るまで、日本カルチャーや日本映画への深い愛と敬意に満ちている。印象派画家たちに発見されたことで“世界の浮世絵”となったように、ウェス・アンダーソンの知性を通し、改めて日本映画が再評価される感覚さえあるのだ。

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平沢 薫

監督の美意識が文字の書体にまで行き渡る

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 ウェス・アンダーソン監督の魅力が極まる。もともと彼の映画は、色調、形、構図、動きの全てが一つの美意識で貫かれた別世界なのが魅力。それを描くのに、ストップモーション・アニメは最適の手法。今回はこの手法も2度目なので、さらに画面の細部ーー文字の配置から書体まで、一つの美学が行き渡っている。
 しかも今回の対象は日本。和太鼓、浮世絵、黒澤明などの日本的要素を彼流に再構築して"架空の日本"を創り出す。主要キャラが犬の姿をした犬たちなので、ストップモーション・アニメに備わる"おもちゃ感"もアップ。アンダーソン監督がお気に入りアイテムだけ集めて作った"ウェス・アンダーソン世界の日本"を堪能させてくれる。

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くれい響

ウェス・アンダーソン監督の集大成であることに間違いない。

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

『ファンタスティック Mr. Fox』以来となる、ウェス・アンダーソン監督のストップモーションアニメは、独特な色彩感覚やシニカルな笑いから生まれるウェルメイド感など、監督のフィルモグラフィの集大成。情報量の多さ、和太鼓をベースにしたアレクサンドル・デスプラによる旋律のインパクトに圧倒される。劇中でみられる日本愛も、『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』に負けずとも劣らないが、ツッコミどころ満載な“奇妙な果実”感に至っては、完全な狙いだけに一枚上手だ。ただ、“異文化を楽しむ感覚”を追求しすぎたことで、日本人にとってはデザイン重視で小さすぎるテロップや主人公の発音が癇に障る瞬間もあり、★マイナス。

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猿渡 由紀

究極の芸術にとにかく感嘆させられる

猿渡 由紀 評価: ★★★★★ ★★★★★

ファンタジーの世界でありつつ、日本を舞台にした今作には、日本文化への深い愛と敬意があふれている。日本語のセリフの部分に、あえて英語字幕をつけないままにして、アメリカをはじめとする英語圏の観客に、わざと「何を言っているかわからないがなんとなくこういうことか?」という体験をさせてみせるところも、リアリティを求める姿勢(と遊び心)の表れ。とにかくひとつひとつが丹念で細かく、美しく、感嘆させられることの連続。オリジナリティと独自のユーモアのセンスで知られてきたウェス・アンダーソンだが、彼はやはり天才と呼ぶに値すると思う。

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斉藤 博昭

外国人監督が描く「日本」が、ここまで「正当」なのは史上初!?

斉藤 博昭 評価: ★★★★★ ★★★★★

日本ロケした作品は別として、他国の映画が「創り上げた日本」の風景は、日本人の視点で多かれ少なかれ違和感があるのは「常識」。その「なんちゃって感」を楽しむことも多かった。しかし今作の日本の描写は、細部の小道具、たとえば「寿」印のリンゴに至るまで、すべてが日本の風景になっていることに驚嘆する。ウェス・アンダーソン監督の日本への敬意に感動をおぼえるしかない。

犬インフルエンザの蔓延によって隔離される犬たちの悲痛な運命は、現代社会にはびこる不寛容や差別を浮き彫りにし、犬と反体制の人間の共闘は有無を言わさず胸を揺さぶり、ストップモーションアニメの究極な美しさ……と、ここまで全要素が完璧な映画は珍しい。

この短評にはネタバレを含んでいます
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