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フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法 (2017):映画短評

フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法 (2017)

2018年5月12日公開 112分

フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法
(C) 2017 Florida Project 2016, LLC.

ライター7人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4.3

ミルクマン斉藤

ラストのゲリラ撮影は滂沱の魔術!

ミルクマン斉藤 評価: ★★★★★ ★★★★★

夢の王国ディズニー・ワールド。そのすぐ近くの寂れ果てた安モーテルはホームレス寸前にある超低所得者層の棲家になっている。そこに住む6歳の女の子ムーニーは元気いっぱい。傍若無人な子供たちに大目玉喰らわせつつ安全でいられるよう目を光らせている管理人ボビー(W.デフォーがこんなに泣かせるって…)の心配をよそに子供たちのいたずら心は止まらず…。無邪気な子供たちとは対照的に大人たちの現状はどんづまり。前作『タンジェリン』もそうだが “忘れられた人々”への綿密なリサーチ作業を経た脚本は社会派的でお先真っ暗。しかし確かな希望を抱かせるのは、薄いパープルに全面塗装されたモーテルの壁とそこに照り返す陽光のせいだ。

この短評にはネタバレを含んでいます
猿渡 由紀

予測を裏切るラストが最高!

猿渡 由紀 評価: ★★★★★ ★★★★★

ウエストハリウッドに住む筆者は、時々、サンタモニカブルバードを徘徊しているトランスジェンダーの売春婦を見かけては、彼女らはどういう人なんだろうと思っていた。実際にその人たち、つまり演技の素人をキャストして、彼女らの日常をリアルに描いたのが、ショーン・ベイカーの「タンジェリン」。この最新作でも、ベイカーはまた、社会で忘れられている人々を描く。彼らの置かれた状況は厳しいけれども、ベイカーの視点はいつも優しい。とくに、エンディング。予測しなかったあのエンディングに、ベイカーの人柄と、フィルムメーカーとしての才能が集約されていると思った。次回作が今から楽しみ。

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なかざわひでゆき

夢の世界のすぐ隣に広がる貧困の過酷な現実

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 フロリダのディズニー・ワールド近郊。そこにはかつて観光客が宿泊したカラフルなモーテルが立ち並ぶが、今ではアパートを借りられない貧困層の仮住まいとなっている。夢の世界のすぐ隣に広がる過酷な現実。これほど現代アメリカの格差社会を強烈に象徴するものはないだろう。
 ここでは、そんな日常を無邪気な子供たちの視点で描いていく。大人の事情など知る由もない子供たちにとっては毎日が冒険。寂れた場末のモーテル街もおとぎの国に早変わりだ。だが、そんな彼らにも貧困の現実が容赦なく忍び寄り、やがて無垢で幸福な時代は終わりを告げる。その結末は70年前の『靴みがき』や『自転車泥棒』を想起させて胸が痛い。

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清水 節

想像の翼を広げる子供たち独自の「夢と魔法の王国」を阻むもの

清水 節 評価: ★★★★★ ★★★★★

 フロリダで暮らす6歳の少女と母、そして近隣の住人。ドキュメンタリーと見まがうほどの子供達の躍動感に驚かされる。ディズニーワールドの“城下町”に建つ、安モーテルに住む貧困層にスポットを当てながら、光と影のコントラストをこれ見よがしには映さない。テーマパーク内に入れなくとも、子供達は想像力で夢や冒険を創り出し、底抜けに明るく無邪気だ。笑い声が絶えず、辺りは色鮮やか。とことん子供目線に立った演出が、格差社会の現状へと自然に導入し、重いテーマへの考察を共感をもって深めさせる。声高に問題意識を訴えはしないが、優しく厳しく見守るモーテル管理人ウィレム・デフォーの無念の表情に、監督の眼差しが表れている。

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くれい響

ウィレム・デフォー管理人の崖っぷちモーテル!

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

前作『タンジェリン』の撮影がiPhone5sなら、今度は35mmカメラ。そんな遊び心たっぷりなショーン・ベイカー監督が、またも“魔法”を魅せる。ループが心地良い疾走感溢れるオープニングで幕を開け、どこか現実離れしたパステルカラーに彩られた映像美で描かれるのは、フロリダの安モーテルが舞台の人情劇。要は日本人が好きな長屋モノだ。ベイカー監督作定番のたくましいヒロインは今回6歳の少女だが、とにかく圧巻の一言。往年のドラマ「チビッコギャング」にオマージュを捧げながら、ガッツリ現実をぶつけてくる、別角度から捉えた『エスケイプ・フロム・トゥモロー』。あと15分、編集で切れれば、満点だっただけに悔やまれる。

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斉藤 博昭

是枝作品にも通じる、切実な日常への温かい眼差し、子役の奇跡

斉藤 博昭 評価: ★★★★★ ★★★★★

子供たちは、どんな環境も遊び場に変える。そんな無邪気な明るさが、パステルカラー&人工的な風景に美しく溶け合い、シビアな現実を描きつつ、幸福な気分になる不思議な一作。この感覚、監督の前作『タンジェリン』と同じ。周囲から白い目で見られても、逞しく生きる人々への眼差しは、ウィレム・デフォー演じるモーテルの支配人に憑依し、温かさと心地よさを充満させる。

犯罪スレスレの行動に出る人々の切実さに、疑似家族的なモーテルの人間関係、子役たちの奇跡の名演技など、奇しくも是枝裕和監督の『万引き家族』と共通点が多いが、終盤の感情の高まりと、そこからの開放感は、この映画独自の魅力として忘れがたい後味を残す。

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平沢 薫

光も色も、鮮やかなのに柔らかい

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 明るさと色彩に魅了される。世界がすべてブルー、ピンク、パープルという鮮やかな色なのに、どぎつくない。これは、フロリダの日差しの下で暮らす、6歳の少女の目に映る世界なのだ。少女が暮らすのは、ディズニー・ワールドのすぐ外にある安モーテル、母親は無職のシングルマザーなのだが、彼女は母親と愛し合っているし、近くに住む友達が大好きなので、世界は輝いている。6歳の少女は、これからさまざまな出来事を体験するだろうが、この光線と色彩は今後もずっと覚えているのに違いない、そう思わせる。
 監督は「タンジェリン」のショーン・ベイカー。被写体がすぐそこにあるかのような生き生きとした躍動感は前作と変わらない。

この短評にはネタバレを含んでいます
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