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レディ・バード (2017):映画短評

レディ・バード (2017)

2018年6月1日公開 94分

レディ・バード
(C) 2017 InterActiveCorp Films, LLC. Merie Wallace, courtesy of A24

ライター9人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4

相馬 学

田舎者のこどもの心に寄り添う愛すべき小品

相馬 学 評価: ★★★★★ ★★★★★

 S・ローナンはつくづくアカデミー会員に愛されてるなあ……と思いつつ、このような心ある小品には心から賛辞を贈りたい。

 友人や父母の元を離れ、自立の一歩を踏み出す。その過程がリアルに映るのは監督の実体験ゆえか。とりわけ、”ここから出たい“”ここが好き“という愛憎半ばする故郷への思いは、田舎育ちの自分には切実に映る。

 ローナンが体現する少女の世界の普遍性については正直よくわからないが、田舎の子どものリアルは確実にある。一方で、彼女の主演でなければオスカー候補になっただろうか?などと意地悪なことも考えた。ともかくテーマはパーソナルで、好きな人はトコトン好きになる、そういう意味での小品。

この短評にはネタバレを含んでいます
中山 治美

現役女子高生こそ見て欲しい

中山 治美 評価: ★★★★★ ★★★★★

青春をとうに過ぎた世代には郷愁でしかないだろうが、ヒロインと同じ、女子高生にとっては明日への活力となるのではないか。
同級生にイケてると思われたいがゆえの見栄も、
どこかへ飛び出したいのに自力じゃ何もできない苛立ちも、
ウザいとしか思えない親への感情も、
まさか2000年代初めの米国の子と共鳴するとは。
今、抱いている問題は自分だけではないと安堵すら感じるだろう。
それは間違いなく、自分が経験した”あの日”の感情を鮮やかに物語に昇華させた監督の才気と、
感情が激しく揺れ動くヒロインを、憎めない愛らしさで演じたS・ローナンの魅力あってこそ。
あぁ、この映画に女子高生時代に出逢いたかった。

この短評にはネタバレを含んでいます
清水 節

スピルバーグも嫉妬する、思春期の内的衝動のビジュアル表現

清水 節 評価: ★★★★★ ★★★★★

 本作で3度目のオスカー候補となった女優シアーシャ・ローナン(94年生まれ)の演技は、練達の域。田舎と都会、娘と母、少女と青年…様々な対立軸の中、若さ故に理想と現実の狭間でジタバタして巻き起こす、女子高生の姿をヴィヴィッドに体現している。ただし“真の主役”は女性監督グレタ・ガーウィグ(83年生まれ)だ。自らの体験からイマジネーションを拡げ、女性の内面を視覚的な表現へと昇華する術に長けており、スピルバーグが嫉妬したのも頷ける。母が運転する車中での言い争いの最中、ヒロインが自らドアを開けてクルマから転がり落ちる冒頭シーンを始め、思春期の衝動・反発・激情を表現する名場面は枚挙にいとまがない。

この短評にはネタバレを含んでいます
平沢 薫

映像表現だからこその魅力も味あわせてくれる

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 実は、とても映画的な表現が味わえる。もちろん、ストーリーも魅力的。女性監督が自分の体験を元に、高校時代の漠然とした欲求不満な心理状態を、リアルな会話と誰もが思い当たる小さな出来事で、生き生きと鮮やかに描く。そして、娘と母親のありがちなメンドウくさい関係の描写もとても巧い。が、映画はそれだけに留まっていない。ひとつひとつのシーンが短く、画面が切り替わっていくリズム、その速度が演出されている。その軽やかさが、日々の何気ないあれやこれやとシンクロする。そしてラスト近く、主人公が町を自動車を運転して回るシーンには、まさに映画ならではの演出が。そんな映像による表現だからこその魅力も味あわせてくれる。

この短評にはネタバレを含んでいます
くれい響

こんなあだ名で私を呼んで

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

「コージ苑」の“ノア(本名・小野あつ子)”のように、自身であだ名“レディ・バード”を公表してしまうヒロインの空気の読めなさと痛さはサイコーだが、『スウィート17モンスター』に続く、ポスト『ゴースト・ワールド』なこじらせ女子モノを期待すると、意外とそうでもない。なんだかんだいって、ある意味、表裏一体な母と娘によるいい話だからだ。シアーシャ・ローナンの芝居は、『ブルックリン』に続いて素晴らしく、ティモシー・シャラメ演じる自称・童貞などの男運のなさや空回りっぷりゆえ、ローナン版『勝手にふるえてろ』としても観ることもできる。ただ、グレタ・ガーウィグの監督デビュー作としては及第点。

この短評にはネタバレを含んでいます
なかざわひでゆき

ちょっぴり恥ずかしくも身に覚えのある、こじらせ女子の青春

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 ここではないどこかへ行きたい、私ではない誰かになりたい。そんな誰もが少なからず経験する思春期特有の願望を、ちょっとばかりこじらせてしまった女子高生の日常が描かれる。見栄を張ってすぐにバレる嘘をついたり、背伸びして自由奔放キャラを演じてみたり。アホやなーと思いつつも、どこか身に覚えがあるだけにムズ痒い。
 活き活きとした等身大のキャラ造形はグレタ・ガーウィック監督の真骨頂。誰よりも娘を愛するがゆえに厳しく当たってしまう母親ローリー・メトカーフがとにかく素晴らしい。お茶目で心の広い老シスターを演じる『エデンの東』の大ベテラン、ロイス・スミスも抜群の好演。瑞々しくも微笑ましい青春映画の佳作だ。

この短評にはネタバレを含んでいます
猿渡 由紀

「わかる、わかる」な青春映画

猿渡 由紀 評価: ★★★★★ ★★★★★

こんな退屈な街を出て、早く刺激的な都会に住みたいと願い続けた高校時代。でも、夢がかなってみると、自分がどこから来たのかへの認識と、感謝が湧いてくる。大学進学で東京に出た筆者は、グレタ・ガーウィグのパーソナルな思いが詰まったこの映画にたっぷり共感した。決して新しい話ではないにも関わらず、新鮮で優れたものにしているのは、脚本と、主演のシアーシャ・ローナン。ローナンは、間違いなく、一番目が離せない若手女優だ。母親役のローリー・メトカーフは、映画にはあまり出ないが、アメリカ人にはコメディ番組「Roseanne」でおなじみの大ベテラン。今作でキャリア初のオスカー候補入りをしたことに心から拍手したい。

この短評にはネタバレを含んでいます
斉藤 博昭

ミュージカルの隠れた名作、その引用も完璧

斉藤 博昭 評価: ★★★★★ ★★★★★

一定の年齢に達し、十代の自分を振り返ると、小っ恥ずかしい思い出の宝庫と化している。これは、そんな記憶のスイッチを入れる作品で、主人公と自分に境遇や性格、ジェンダーの違いがあっても、そこかしこに共感の入口が提供される作り。魅力は、これに尽きる。

主人公たちが演じる「メリリー・ウィ・ロール・アロング」は、ミュージカル界の至宝、ソンドハイムの隠れた名作で、改めてメロディの美しさとダイナミズムに魅了されるが、挫折や成功を味わった友人たちが、過去の青春時代へさかのぼる同作の展開は、『レディ・バード』で観客が味わう感覚とシンクロする。こうした巧みな引用もあり、観た後も主人公の未来へ想像は広がるのだった。

この短評にはネタバレを含んでいます
森 直人

これまでになかった王道

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

筆者が共感したのは、なんとヒロインの女子高生だ。『15時17分、パリ行き』でも保守性が窺えた地元サクラメントで鬱屈し、先端的な東海岸に憧れ、ライオット・ガールに感化されつつ、少女の頃に聴いたアラニスやD・マシューズが今も大好き。この固有名詞を入れ替えれば「私・俺の物語だ」と感じ入る人は沢山いるはず。

『フランシス・ハ』『ミストレス・アメリカ』の前日談との意味でG・ガーウィグの自分語りがベースだが、定番の枠組みを使って絶妙にフィクション化。時代設定は02年で、9.11の影響も等身大の生活感覚で反映。マンブルコアを経てJ・ヒューズも『ゴーストワールド』も『JUNO』も更新した、めっちゃいい映画!

この短評にはネタバレを含んでいます
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