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へレディタリー/継承 (2018):映画短評

へレディタリー/継承 (2018)

2018年11月30日公開 127分

へレディタリー/継承
(C) 2018 Hereditary Film Productions, LLC

ライター6人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4.2

くれい響

古典を継承したうえで見えてくる、新たな恐怖

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

ウェス・アンダーソン的な箱庭世界から始まるオープニングから、不穏な雰囲気を醸し出し、『クワイエット・プレイス』同様、子役の巧さもあって不気味さは倍増。とはいえ、『ローズマリーの赤ちゃん』『普通の人々』といった古典ホラー&ホームドラマから影響を受けた本作は、衝撃的なラストなど、同じ「A24」スタジオ作品である『アンダー・ザ・シルバー・レイク』にも通じるカルトムービーとして仕上がっている。確かに、伏線回収だけでなく、さまざまな首チョンパや『シャイニング』のシェリー・デュヴァル的なトニ・コレットの顔芸もなかなかだが、雰囲気づくりのために費やされた127分の長尺など、過大評価されている感も否めない。

この短評にはネタバレを含んでいます
なかざわひでゆき

親から子へと継承される、逃れようのない恐怖

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 一見したところ平凡な家族に隠された恐るべき暗い秘密が、祖母の死をきっかけにじわじわと表出していき、やがて悪夢のようなクライマックスへとなだれ込む。いわば、この家族に生まれてしまったがゆえの、逃れようのない呪縛を描いた作品。秘密の真相はけっこう容易に想像がつく。娘としてその忌まわしい宿命を受け継ぎ、母親として愛する我が子にそれを背負わせてしまうヒロインの、途方もない絶望感と無力感こそが、本作における恐怖の核心と言える。ポランスキーやキューブリックを彷彿とさせる要素も多々あり。観客の不快感を徐々に煽り、やがて奈落の底へと突き落とすタイプの胸糞系ホラー。その点で好き嫌いは分かれるだろう。

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相馬 学

ジャンル映画の枠を超えた、2時間強の悪夢

相馬 学 評価: ★★★★★ ★★★★★

 ホラーのようなジャンル映画は90分程度で尺が収まるものだが、本作は2時間超え。それでいて、まったく飽きさせないどころか、どんどんのめりこませるのだから恐れ入る。

 祖母を亡くした一家の重苦しい空気は次第に不穏なものへと変容。映像の構図、ライティング、音響にいたるまで、とにかく見る者を落ち着かせない。T・コレットの神経衰弱ぎりぎりの演技もスゴいし、子役のホラー顔も強烈だ。

 『イン・ザ・ベッドルーム』のような徹底して冷ややかな家族ドラマに『ローズマリーの赤ちゃん』のようなオカルトをブレンドした凄み。これはただのジャンル映画ではない。新鋭A・アスターには、今後の大仕事を期待していいと思う。

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斉藤 博昭

怖すぎて笑っちゃう瞬間もある、ホラー映画の「見本市」的な興奮

斉藤 博昭 評価: ★★★★★ ★★★★★

ホラーに限らず映画は、それなりに一定のトーンが保たれているものだが、今作はホラーのさまざまな表現方法を駆使し、観る者を幻惑し続ける。暗闇での何かの「気配」、突然の衝撃映像、日常で聞く「音」の恐怖、カルト的な集団、コックリさんのような霊との対話、常軌を逸していく人々、そしてリアルと幻の曖昧な境界…と、一見、散漫なエッセンスが、適材適所に配置された脚本と演出の妙。そしてこれが肝心なのだが、「作り物」としてのケレン味も忘れていない。大げさ過ぎて思わず笑っちゃうシーンもあり、怖いけど不謹慎に楽しめる背徳感も、ホラーの醍醐味だと再認識できた。トニ・コレットの驚異の「顔芸」を中心に役者陣の猛演にも拍手を!

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平沢 薫

登場人物たちには見えないものが、観客にはよく分かる

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 うまくいかない家族関係を経験したことがあるなら、凄まじい恐怖に襲われるだろう。同じ家族という集団に属しながら、相手を愛することができず、しかしそのことに無意識のうちに後ろめたさを抱いてしまう人間心理の暗部を、ここまであからさまに描けてしまえるのは、本作がホラーという形式を使っているからだろう。表面で起きる出来事にはホラーの定番要素を並べ、それをエクスキューズにして、その表層下でうごめく直視し難い人間心理をところどころで露出させる。登場人物たちが無意識に否認しているせいで見えなくなっているものが、観客にはよく分かる。それにつけてもトニ・コレットが凄い。この演出も、彼女の演技力があってこそ。

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猿渡 由紀

本当に怖い映画。演技もトップクラス

猿渡 由紀 評価: ★★★★★ ★★★★★

ホラー映画はたくさん作られても、たいして怖くないものが多いのが現実。だが、これは本当に怖い。霊を呼び出す儀式をしたらコップが動くなど、見慣れたはずのオカルトの要素にも、震え上がってしまう。主人公アニーと映画の最初で亡くなる彼女の母、またアニーと彼女の長男、長女との複雑で屈折した関係がしっかり設定されていることが、大きな理由のひとつ。超常現象なくしても、そこにすでに暗さと重さがあるのだ。キャスト陣も、超一級。とくにアニー役のトニー・コレットは、このアワードシーズン、いろいろな賞にノミネートされるにふさわしい。ホラーというジャンルへの偏見に邪魔されなければいいのだが。

この短評にはネタバレを含んでいます
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