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バイス (2018):映画短評

バイス (2018)

2019年4月5日公開 132分

バイス
(C) 2018 ANNAPURNA PICTURES, LLC. All rights reserved.

ライター7人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4.3

山縣みどり

D・チェイニーの人生はダーク・コメディである!

山縣みどり 評価: ★★★★★ ★★★★★

政治家D・チェイニーがいかにしてアメリカを危険にさらしてきたかを暴いているが、笑える演出がなされている異色作。「アメリカは強くなくてはならない」と信じ、湾岸戦争や世界同時多発テロ後のイラク戦争を主導し、ときには国賊的とも思える行動も取る政治家のモラルのなさに唖然。世界を混乱に陥れた罪は深く(今も続いているし!?)、笑いで済ますのは如何なものか?と監督に問いたくなる。怪人チェイニーを熱演したC・ベールもブッシュ役のS・ロックウェルも完璧な役作りで臨んでいて、アメリカの黒歴史の再現ドラマとして必見。とはいえ、政治が『サタデーナイト・ライブ』の逆パロディ化しているアメリカは大丈夫なのでしょうか? 

この短評にはネタバレを含んでいます
くれい響

影の大統領を語る“天の声”の正体!

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

経済用語の言葉責めだった、アダム・マッケイ監督の前作『マネー・ショート 華麗なる大逆転』に比べ、スタッフ&キャスト再結集の本作は、かなり観やすい。ある意味、アメリカン・ドリームを実現した一人の男のサクセス・ストーリーが描かれているからだ。そんなサム・ロックウェル怪演のブッシュ政権で、“人形使い”だったディック・チェイニーの実像が明らかになるなか、彼も鬼嫁に操られていたという構造も面白い。その面白さを、さらに際立たせるのが“天の声”といえるナレーションの存在。ただ、あまりに攻めまくりで、今年のオスカーでメイクアップ&ヘアスタイリング賞しか獲れなかったのも、なんとなく納得(笑)。

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相馬 学

笑えるが、毒はキツくて、ある意味ホラー

相馬 学 評価: ★★★★★ ★★★★★

 史実に基づく、笑えるエンタテインメントとしてよくできてはいるが、そこに含まれる毒は、とてつもなくキツい。

 酔いどれの大学生が、ホワイトハウスの中枢で権力を振るうようになるまで。同時多発テロで誰もが衝撃を受ける中、それを“チャンスだ!”と思えるほど、権力に固執するチェイニーの恐ろしさ。彼はもちろん、無能な大統領も、チェイニーの尻を叩く妻もコワい。

 演技派俳優陣の抑えた演技は、こんな人間が少し前まで大国を動かしていた現実をリアルに伝え、今もさほど変わらない状況であることを匂わせる。ブラックコメディだが、ある意味ホラー。『マネー・ショート 華麗なる大逆転』に続き、マッケイ監督の視線は鋭い。

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平沢 薫

マッケイ監督のブラックな笑いがさらに強烈に

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

「マネー・ショート 華麗なる大逆転」で、リーマンショックをモチーフに金融界の価値観をブラック・コメディの形で暴いてみせたアダム・マッケイ監督が、今度は同じ手法で政治の世界を料理。ブッシュ政権の副大統領ディック・チェイニーを主人公に、政界の舞台裏を描く。
 監督の手さばきには磨きが掛かり、主人公がブッシュの心理を操作するさまを、魚を釣り上げる様子と交互に映し出すなど、演出もよりあからさまかつ過激。演技派俳優たちのそっくり演技も見事。描かれているものが、現在アメリカの政界で起きていることに直結して見えて、思わず笑いもこわばるブラックな味がさらに強烈になっている。

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森 直人

マイケル・ムーアの隣にある仕事

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

『LBJ』がJFK物のスピンオフだとしたら、こちらはブッシュ(/トランプ)物を補完する大玉。内容はバートン・ゲルマン著『策謀家チェイニー』に沿ったものとも言えるが、『マネー・ショート』で気を吐いたアダム・マッケイのポップ&トリッキーな語り口は米国史の闇を高次元でブラックコメディ化する。

マッケイいわく、本作は『パットン大戦車軍団』に影響を受けたらしい。かつて映画評論家・佐藤重臣はパットンが手にした権力を「自分のオモチャ」と表現した。チェイニーも同様だろう。凡人が天才になってしまう恐怖、とのラインで考えればナチス物に接続できそう。その根幹を揺るがす娘メアリーの存在はもっと強調されても良かった。

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斉藤 博昭

ラミ・マレックとはまた違う、C・ベールの「演技を超えた仕事」

斉藤 博昭 評価: ★★★★★ ★★★★★

出だしこそ前作『マネー・ショート〜』と同様に、監督らしい遊び心があるトリッキーな演出のノリが鼻につくものの、中盤の息子ブッシュ登場あたりから、がぜん物語の勢いが増し、イラク戦争開戦に向ける強引な作為劇の渦に巻き込まれた。結末も鋭い。ここで描かれたエピソードが完全に真実ではないかもしれない。しかし映画としての説得力は空前絶後で、一方で過去の話とはいえ、日本ではここまで政権批判する映画を作れない、という虚しさに包まれる。

ラミ・マレックのフレディ役が努力の賜物なら、こちらのC・ベールは自身をすべて消し去り、完全に「その人」として存在する稀有な例。ブッシュ役のロックウェルの「似せ方」も神レベル。

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猿渡 由紀

怖いことは見えないところで起こっていた

猿渡 由紀 評価: ★★★★★ ★★★★★

 トランプ叩きに忙しくなる前、“悪者”は、ジョージ・W・ブッシュだった。彼の無能さ、無知さは、当時さんざんジョークのネタにされたもの。だが、本当に政治を操っていたのは、黙ってそばにいたこの副大統領だったのだ。たいした野心家でもなく単純労働に従事していた男が、なぜここまでの権力をもてるようになったのか。世間の気づかぬところで、今の時代につながる変化が、どのようにこっそりと作られていったのか。知らなかった事実がたっぷりの今作には驚愕させられっぱなし。上手にユーモアまで散りばめているのは、さすがコメディ出身のアダム・マッケイ。強烈で、恐ろしく、深く考えさせる1作。

この短評にはネタバレを含んでいます
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