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ある少年の告白 (2018):映画短評

ある少年の告白 (2018)

2019年4月19日公開 115分

ある少年の告白
(C) 2018 UNERASED FILM, INC.

ライター4人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 3.8

斉藤 博昭

スキャンダラスに陥らず、真摯に見つめる同性愛矯正の不毛

斉藤 博昭 評価: ★★★★★ ★★★★★

『レディ・バード』、本作と、同性を愛する役を演じた時のルーカス・ヘッジズは、最もニュートラルに共感を誘うから不思議だ。ジョナ・ヒル監督の『Mid 90s』での過激な兄貴のような役も巧みだが、やはり自らの意思と周囲の思惑に挟まれる屈折感で、若手スターの中でも抜きん出た表現力を備えている。
セクシュアリティの矯正は想像していたほど衝撃的ではないが、それゆえに静かに怒りが蓄積する効果をもたらす。いかに不毛で、無駄な努力なのかが、オーソドックスな演出と、登場人物の素直に込み上げてくるセリフで紡がれ、怒りが終盤に一気に爆発する感じだ。両親の葛藤もそれなりに描かれるが、もう少し掘り下げてほしかった気も。

この短評にはネタバレを含んでいます
山縣みどり

マイク・ペンス副大統領に絶対見てほしい!

山縣みどり 評価: ★★★★★ ★★★★★

性的指向やジェンダーを治療(!?)するという考えにゾッとする。しかもセラピー内容が児童虐待そのもので、施設や自称セラピストの実態を暴く点でも必見である。牧師の息子である主人公がセラピーを受けながら同性愛者であると自覚する過程が軸だが、J・エドガートン監督は家族ドラマに比重を割いている。宗教と息子のアイデンティティの折り合いをつけられない父親、夫と息子の狭間で揺れる母親の描写はとても誠実だ。L・ヘッジズが葛藤する主人公をリアルに演じ、演技派のR・クロウとN・キッドマンが彼をしっかりと支える構図となっている。矯正セラピー支持派のマイク・ペンス副大統領に見てほしい静かな快作だ。

この短評にはネタバレを含んでいます
なかざわひでゆき

21世紀の先進国に同性愛矯正プログラムがあることに驚く

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 ゲイであることを告白した高校生が、息子の将来を心配した信心深い両親の勧めで、同性愛を治すための矯正プログラムを受けることになる。これが原作者の実体験で、しかも21世紀に入ってからの話というのだから少なからず驚くが、しかし地域が保守的なアメリカ南部、父親が敬虔な牧師という環境であれば、少年が「やっぱり僕はおかしい、病気だから治さなくちゃ」と思い込んでしまうのも無理はなかろう。迷い葛藤しながらも自らの性的指向を受け入れていく主人公役のルーカス・ヘッジズも好演だが、なにより南部女性らしく夫を立てる控えめな母親が、息子の尊厳を守るため毅然と立ち上がる姿を演じたニコール・キッドマンが素晴らしい。

この短評にはネタバレを含んでいます
猿渡 由紀

神、愛という名のもとに正当化される残酷

猿渡 由紀 評価: ★★★★★ ★★★★★

アメリカの保守派には、今もまだLGBTが“矯正”できるものと言っている人がいて、愕然とさせられることがある。しかし、それらの矯正セラピーなるものが実際どんなものなのか、考えたこともなかった。この実話でそのような施設に入れられた主人公は、現代の先進国で行われているとは信じがたい体験をする。それも、神、愛という名のもとに行われるのだ。自分という人間を否定することを強いられた人々の苦しみを見るのは、本当に心が痛む。何より辛いのは、彼をそんなところに追いやったのが、実の両親だということ。だが、その両親をずっと悪者としてだけ描かないところに、少しの光が差し、人間味が生まれている。

この短評にはネタバレを含んでいます
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