ADVERTISEMENT
小学生には助言・指導が必要

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド (2019):映画短評

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド (2019)

2019年8月30日公開 161分

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド

ライター12人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4.6

大山くまお

完璧に創り上げた1969年のハリウッドに飲み込まれる

大山くまお 評価: ★★★★★ ★★★★★

タランティーノがあらん限りの知識と愛情を注ぎ、完璧なまでに創り上げた1969年8月のハリウッド。映画産業は明らかに斜陽で、社会は不穏な影を見せ始めているけど、やっぱりハリウッドは愛らしく、観ているこちらもいつまでもその世界にとどまっていたくなる。あたかもスクリーンのあちら側とこちら側がつながってしまったかのように感じるのは、片渕須直監督が『この世界の片隅に』でやり遂げた手法とまったく同じ。「長い」と言われがちな上映時間161分も、そのために必要だったのだろう。架空の人物を演じたディカプリオとブラッド・ピットも、まるで実在の人物のように息づいていた。ディカプリオが泣いたシーンでおれも泣けたよ。

この短評にはネタバレを含んでいます
ミルクマン斉藤

現実よりも夢を選択する意思的な映画愛。

ミルクマン斉藤 評価: ★★★★★ ★★★★★

もお、タラちゃんったら度外れたロマンティシストなんだからあ、と改めて骨身に沁みさせる作品。プロット自体はかなり散漫で、1969年ハリウッドのスケッチでしかない、といってもいいくらいなのだが、前時代的なスターとスタントマンの切っても切れないバディ関係を映画だけが映像じゃなくなった転換期に置くことによって、皮相的にあの時代そのものを鳥瞰する。タラ世界におけるマンソン・ファミリーは徹底的にマヌケで、ほころびが見えつつあるものの絶対的に夢の世界たるハリウッドをぶっ壊すに足るものではないのだ。それにしてもハードコア・ポルノへの二度に渡るネタ振りといい、エロカワ映画看板のチョイスといい私的親近感大。

この短評にはネタバレを含んでいます
山縣みどり

どんな夢も叶えてしまう映画のパワーを実感

山縣みどり 評価: ★★★★★ ★★★★★

変化を迎えた60年台後半のハリウッドを舞台に、タランティーノ監督らしいノスタルジーとオタク趣味が炸裂する痛快作。タラ組の花形レオ様&ブラピによるバディ・ムービーであり、『大脱走』にレオを挿入するなど監督らしいお遊びが随所に。またマンソン・ファミリーの犯罪をめぐる「こうだったら、よかったのに」というタラ少年の切なる思いがスクリーンで実現。『イングロリアス・バスターズ』も同様だが、夢や妄想を叶えてしまう映画のパワーを実感する。ブラピ演じるワケあり風なスタントマンvsブルース・リーなど見どころ多数だが、レオ演じる落ち目俳優が天才子役にインスパイアされる場面が特に心に残った。モデルはJ・フォスター?

この短評にはネタバレを含んでいます
中山 治美

中指を立て続ける男

中山 治美 評価: ★★★★★ ★★★★★

タランティーノによるTVやB級映画の担い手たちへのオマージュであることは間違いないのだが、『キル・ビル』を無邪気に作っていた頃とは違う。最近の作品同様、怒りがある。時代の変化の名の下に、一斉を風靡したスターやスタッフを簡単に切り捨ててしまうハリウッドのシステムに対して。『吸血鬼』や『ローズマリーの赤ちゃん』を伸び伸び製作していたポランスキー夫妻の運命を変えてしまったカルト集団に対して。自分が愛したモノを破壊した奴らにラストで強烈なお仕置きを用意したのがタラらしいが、お金と技術を投入して彼らが生きていた時間を精密に再現した愛情のかけ方も彼らしい。でもちょっと長いかな。

この短評にはネタバレを含んでいます
村松 健太郎

タランティーノ少年の夢

村松 健太郎 評価: ★★★★★ ★★★★★

50年前の夏に起きた惨劇は、とくにハリウッドに大きな影を落としました。今なお、影響の残るその大きな影に永遠の映画少年タランティーノが過去作でも使ったある手法で奇跡を起こします。
ついに共演が叶ったレオナルド・ディカプリオとブラッド・ピット。それぞれアイドル的な存在として活躍してきた両雄が、40代・50代になったからこそ出せる“枯れ”が物語の影と高レベルでシンクロ。面白くて、やがて悲しいハリウッドの夢物語が完成しました。

この短評にはネタバレを含んでいます
清水 節

夢の続きを生きるレオ×ブラピの最凶バディに忍び寄る時代の終焉

清水 節 評価: ★★★★★ ★★★★★

華やかな時代の残り香を微かに感じる1969年ハリウッド。風俗の再現は美術・音楽・衣装において完璧。スティーブ・マックイーンになり損ねた男がTVドラマの悪役を得て生き延びている。その悲哀をディカプリオは可笑しく切なく体現する。支えるブラピとのバディぶりは最強にして最凶。この街の片隅では、ブルース・リーもシャロン・テートも明日を夢見ている。ラロ・シフリンやサイモン&ガーファンクルをかけまくり、人に街に時代に、あらん限りの愛を注ぐ。そこへ忍びよる禍々しい影。ハリウッドを決定的に変えてしまった8月9日。夢の時代の終焉に向けた怒涛の展開に、タランティーノは持てる技を全て詰め込んだ。集大成にして頂点。

この短評にはネタバレを含んでいます
猿渡 由紀

L.A.と映画への素敵なラブレター

猿渡 由紀 評価: ★★★★★ ★★★★★

今作の魅力は、ディテール。ラジオでかかっている音楽やCM、街並み、人のふるまい、俳優が役のための準備をする姿など、1969年のL.A.や映画界が、とても細かいところまで愛を込めて再現されているのだ。落ち目のスターと彼専属スタントマン兼親友という主人公ふたりの設定も、いかにも当時を象徴するもの。とくに前半は大きなストーリーがなく、彼らの日常がひたすら見せられていくので、それらを楽しいと思うかどうかで、見る人の評価は変わるだろう。マンソン事件に関わった実在のキャラクターのそっくりさんぶりも見事。結末のおもしろさを理解するために、この事件については簡単な知識をもっておくことを勧める。

この短評にはネタバレを含んでいます
相馬 学

より強く、タランティーノ、映画愛を語る

相馬 学 評価: ★★★★★ ★★★★★

 『イングロリアス・バスターズ』が映画を勝者にして映画愛を謳った作品ならば、ハリウッドを舞台にした本作はタランティーノのそんな思いがより鮮明に出た快作だ。

 悪役はナチスではなく、時代背景となる1969年に悪名を馳せたカルト教団マンソン・ファミリー。史実では、その凶行はシャロン・テート殺人事件に発展するのだが、むろんタランティーノに史実を再現する気はない。

 ディカプリオ&ブラピがふんする、落ち目の俳優とそのスタントマンは、この事件に図らずも巻き込まれる。彼らのユーモラスなドタバタに引き寄せられるうちに、ドラマは史実を飛び越えて深い映画愛に着地。タランティーノ流ファンタジーの真骨頂を見た。

この短評にはネタバレを含んでいます
斉藤 博昭

荒ぶるブラピ、自虐のレオと幸せな映画の時間へ…

斉藤 博昭 評価: ★★★★★ ★★★★★

見どころが多すぎる作品で、一言での評価は難しい。時代の再現、映画愛、会話の楽しさ、過激描写、足フェチ(!)は言うまでもなく、今回、タランティーノは「俳優の演出」を存分に楽しんだようで、プライドと不安、自虐に操られるディカプリオ、荒ぶる野獣ブラピ、能天気に悲劇を予感させるマーゴット・ロビーと、3人から個性のさらに一歩先の魅力を引き出す。

全体のテンポは快調だが、たしかに体感的に長いシーンはある。タランティーノらしく時間を観客に共有させる意図があり、ラストをふまえて2度目に観たとき、その長さをより心地よく切なく感じられた。何より、これほど幸せな余韻に包まれるタランティーノ作品も初めて。ほぼ満点。

この短評にはネタバレを含んでいます
平沢 薫

タランティーノのハリウッド映画愛が溢れ出す

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 本編を見終わると、タイトル冒頭の「ワンス・アポン・ア・タイム」の語が、セルジオ・レオーネ監督作にこの語で始まる映画があることはさておき、おとぎ話を語り始める時の慣用句であることが深く腑に落ちる。そして全編が思い起こされて、逸話のそれぞれ、画面の端々に、タランティーノの映画への愛が溢れていたことに改めて気づかされる。逸話が多く、感じ入る場面は選り取り見取り。初見時はシャロン・テートが映画館に行くエピソードに胸を打たれたが、2度目では違うかもしれない。'69年のハリウッドの映画や状況、ゴシップについて、知っていれば知っているほど楽しめもするが、それらをさておいて、迫ってくるものがある。

この短評にはネタバレを含んでいます
くれい響

となりのシャロン・テート

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

タイトルどおり、1969年のハリウッドで起こった3日間を描いたバックステージものであり、タランティーノ流“おとぎ話”。主軸となるのは、スティーヴ・マックイーンとバド・ エイキンスの関係性と同じ、ディカプリオ&ブラピ演じる俳優とスタントダブルの笑って泣かせるブロマンスだ。その一方で、淡々と描かれるのは、『サイレンサー第4弾/破壊部隊』上映館でも承認欲求全開のシャロン・テートに撮影所でもビッグマウスなブルース・リー、怪しい動きをするマンソン・ファミリー。寄り道しまくった後、怒涛のクライマックスに転調する流れは『デス・プルーフ』的であり、濃度120%タラ汁を堪能できること必至!

この短評にはネタバレを含んでいます
なかざわひでゆき

懐かしきハリウッドへ捧げたタランティーノ流オマージュ

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 あえて明確なプロットを持たない本作は、時代の大きな変わり目である’69年を舞台に、タランティーノが恋焦がれる古き良きロサンゼルスとハリウッド業界へオマージュを捧げた、ユーモアと哀切とバイオレンスとノスタルジーに溢れるバックステージものだ。落ちぶれた架空の映画俳優とそのスタントダブル、そして時代の先端を行くトレンディ女優シャロン・テイト。この3人をある種の狂言回しとしながら、フラワーパワー咲き乱れるカリフォルニアドリームの光と影が描かれる。画面の隅々にまで散りばめられたマニアックな60’sカルチャーにワクワク。ブルース・リーやマックイーンなどの登場も楽しい。2時間40分もあっという間だ。

この短評にはネタバレを含んでいます
ADVERTISEMENT

人気の記事

ADVERTISEMENT

話題の動画

ADVERTISEMENT

最新の映画短評

ADVERTISEMENT