フッド：ザ・ビギニング (2018)：映画短評

ロビン・フッドとその仲間たちがシャーウッドの森に入るまでの物語だが、おそらくはこの映画のオリジナルだろう。しかし神の名を借りた十字軍の侵略戦争および虐殺に抵抗し、州長官と教会に領地を没収された若き領主がそれをきっかけに階級闘争に目覚める、という設定は多分に現代的。ま、現代的が過ぎて相棒ジョンがアラビアのイスラームで、しかもロビンは彼からロッキーみたいに猛特訓されたりするのだけれど、もともと必要以上に物語を深くする意志も感じられず、それはそれでまあアリか、というところ。まさに矢継ぎ早に矢を繰り出す高速弓術アクションはかなりの新機軸で魅せはするしね。木版画挿絵ふうのyU+coのタイトルは秀逸。

「なぜ、このタイミングで「ロビン・フッド」？」と思いきや、明らかにドラマ「ARROW/アロー」の影響強し。そして、デザインスーツなど、カッコ良ければ、時代考証なんてどうでもいいし、弓矢の早打ちに特化したアクションだけ魅せればいいじゃん！といった、タロン・エガートンのアイドル活劇を目指した作り手の開き直りが、じつに清々しい。ベン・メンデルソーンは期待を裏切らない悪役っぷりで、作品自体にも『ロック・ユー！』のような勢いがある。特訓シーンに燃えたはずの弓矢アクションは意外にもバリエーションに欠けるが、全米大コケからのラジー賞3部門候補と、槍玉に挙げられるほど、酷い仕上がりでもない。

エルトン・ジョン役が渾身の名演技だったことは認める。しかし、タロン・エジャトンの本質的魅力との違和感がまとわりついたのも、これまた事実。しかしこのロビン・フッド役の無鉄砲な若武者ぶりで、そんな不満は解消。本人には申し訳ないが、『キングスマン』から連なる茶目っ気ヒーローと、彼の相性の良さを実感することに。

そんな「動ける肉体」を、スピード感と迫力を目指すゆえのカメラの動きや多めのカット割りが邪魔しているのがもったいない。弓の名手としての活躍も、もっと観たかった。

某国のリーダーを思わせる大衆を熱狂させる弁舌のリーダーや、やたら現代的なノリの会話など、時代を超越させるチャレンジは効果的。

欲深い役人の圧政に抵抗する庶民派ヒーローとして愛されたロビン・フッドを現代風に解釈していて、G・リッチー監督の『キング・アーサー』と似たテイスト。派手なバトルが見どころ。田舎貴族が正義の味方になるまでのオリジン・ストーリーにしたのは、トリロジーを意識してのことかも。十字軍中に知り合った異教徒ジョンの指導で『ロッキー』的に戦闘能力を高めたり、マリアンがウィル・スカーレットと結婚していたりと過剰な脚色に違和感を覚えた。B・メンデルスゾーンの悪代官ぶりも通り一辺倒で、やっつけ仕事な感じ。大作なのにもったいない。とはいえ、タロン・エガートンのファンなら楽しめるはず。

　今さら感もあるロビン・フッドの物語だが、リベラル志向の強いディカプリオがプロデュースしているのだから、悪しき権力に対する貧困層の怒りをベースになるのは納得。そこに現代性を見ることができる。

　ベースはあくまで勧善懲悪の冒険活劇。T・エジャトンは歴代のロビン俳優に比べて年少だが、そのぶんアクションのキレは若々しく、マリアンとの恋もじれったくなるほど一途で、ドラマ的にも面白い。

　J・フォックスふんするジョンの設定は強引ではあるものの劇画タッチの物語にあっては、彼とロビンの師弟コンビの絆も熱いものを感じさせるに十分。ふたりの息の合ったスピーディな連携アクションも目を見張るものがある。