ゴッホの視点を再現したかのようなカメラワークが素晴らしい

ゴッホがもっとも精力的に絵を描きながらも、精神的には壊れかけていた晩年2年間に光をあてたJ・シュナーベル監督のゴッホ解釈が腑に落ちる伝記映画だ。まず印象的なのがカメラワーク。焦点をずらしたり、ティルトさせたり、ゴッホの動きに同調したり。ゴッホの瞳に見えていたであろう風景が再現されていて、臨場感がはんぱない。W・デフォー演じるゴッホは情緒面に問題アリかもしれないが、南仏の自然や陽光に希望を見出したポジティブな男性にも思える。これは監督がゴッホの拳銃自殺説に関する新解釈を採用しているためだろう。映画鑑賞後に足を運んだゴッホ展の満足度は非常に高かった。