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mid90s ミッドナインティーズ (2018):映画短評

mid90s ミッドナインティーズ (2018)

2020年9月4日公開 85分

mid90s ミッドナインティーズ
(C) 2018 A24 Distribution, LLC. All Rights Reserved.

ライター8人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4.1

山縣みどり

ジョナ・ヒルの手堅い監督デビュー

山縣みどり 評価: ★★★★★ ★★★★★

コメディから出発し、脚本を書いたりしながら、着実に演技の幅を広げてきたジョナ・ヒルらしい、手堅い監督デビュー作だ。スケボー少年だった自身の思春期のもやもやした思いや大切にしたい友情、仲間内のマウンティング、初体験や家族関係などなど。大人の階段を上る少年が味わう喜びや悔しさ、恥ずかしさといった瑞々しい感情が溢れ出す。主演のサニー・スリッチは性的な場面が気の毒なほど幼い感じだが、背伸びしたいスティービー役を感情豊かに演じ切った。スケボー仲間は全員、プロのスケートボーダーというが、演技も玄人はだしで驚くほど。特にプロになる可能性を秘めたレイ役のN・スミスがいい味を出していた。

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轟 夕起夫

心を擦りむかれて、痛かった

轟 夕起夫 評価: ★★★★★ ★★★★★

最初に浮かんだのは、青春期の「不安定な均衡」というフレーズだ。微妙なバランスで、しかしある種の万能感を伴って加速してゆく運動体。それがスケボーに乗った少年たちの、それぞれの“重心”のドラマでもって視覚化されている。なかでも撮影時11歳、主役サニー・スリッチのいたいけな魅力が半端ない!

監督・脚本のジョナ・ヒルは10代の頃を追憶しているが、ノスタルジーに浸っているわけではない。そういえば、若き彼もいい味出してた傑作『スーパーバッド 童貞ウォーズ』(07)は、盟友セス・ローゲンとエヴァン・ゴールドバーグの自伝的な脚本作。これもまた当事者とって「撮らねばならなかった」通過儀礼的な映画なのだと思う。

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相馬 学

90年代劇?スケボー映画?否、普遍の青春ドラマです!

相馬 学 評価: ★★★★★ ★★★★★

 1990年代、LA、そしてスケボー。時代も場所も趣味も限定された物語だが、いつでもどこでも変わらない普遍の青春ドラマが宿る。

 主人公は13歳で、彼が憧れる年長の子たちは16、17歳。この世代の3、4歳違いは小人と巨人ほどの差がある。仲間内には絆も嫉妬もあり、夢を追いたい気持ちも、享楽の欲求もある。それらすべてをリアルに響かせたからこそ、見ていて笑えたり、泣けたり。

 生々しくも詩的で、客観的でありながらも、ここぞという場面では主観を投入する。初監督とは思えないジョナ・ヒルの妙技。『ブックスマート~』も共感できる傑作だったが、本作もまた俳優出身の監督が鮮烈なデビューを飾った必見作!

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猿渡 由紀

欲張らず「自分が知っていること」を語った成功例

猿渡 由紀 評価: ★★★★★ ★★★★★

青春物は往々にして笑いを取ろうと必死になりがちだが、これはそんな無理をしない、素直で正直な映画。初監督がやるべき「自分が知っていることを語る」に徹した成功例といえる。ディテールにこだわり、ただ会話をしているシーンや静かな瞬間を大事にしつつも、欲張らず、小さく85分にまとめたのもいい。その中には、若者が内に秘める絶望、閉塞感、不安、そして仲間意識などさまざまな感情と、若さならではの危うさが、上手に盛り込まれている。偶然にも日本では同じ週末に公開となるドキュメンタリー「行き止まりの世界に生まれて」と重なる部分も多く、合わせて見るともっと興味深くなる。

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くれい響

サニー・スリッチのショタ感がハンパない!

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

タイトル通り、90年代半ばのLAを舞台にした“ノスタルジックな『ボーイズ・ボーイズ ケニーと仲間たち』”。不良なパイセンに見守られ、酒にタバコ、果てはクスリやオンナ(!)まで覚えるサニー・スリッチのショタ感がハンパないなか、ここでもエアジョーダン好きの兄ちゃん演じるルーカス・ヘッジスが、いい味出しまくり。全編16㎜フィルムで撮られたスタンダード・サイズに、ベタすぎるが、決して嫌いじゃない選曲など、ジョナ・ヒル監督のセンスが炸裂。人文字ならぬ、スケボー文字で作られた冒頭の「A24」ロゴが語るように、ブランドイメージにどハマりの青春映画でもあり、“今年の『スケート・キッチン』枠”に決定!

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平沢 薫

切なく、危うく、ヒリヒリする

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 ヒリヒリする。大人になってから回想する子供時代は楽しいものなりがちだが、この映画で描かれる子供時代はそれだけではなく、実際のそれのように切なく、危うく、見ていると胸がヒリヒリ痛む。
 90年代半ばのロサンゼルス、そこで暮らす少年が、生まれて初めて、家族とは別の人間集団の一員になる。その体験は少年に目の眩むような開放感、自尊心、大人になった気分といった、気持ちが浮き立つ感覚をもたらす。スケートボードに乗っているときのスピード感がその快感を増幅させる。しかし、その体験は、それまで知らなかった痛みや苦さも連れてくる。この映画はその両方を、鮮やかに生々しく描き出していく。

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斉藤 博昭

90年代少年の能天気に、じわり現実が食い込む感覚…たまらん!

斉藤 博昭 評価: ★★★★★ ★★★★★

最初に観てから2年経つが、車が行き交う道路の真ん中や、夜の公園を行くスケボーのシーン、その心地よい流れの感覚が今でも残っている。
監督ジョナ・ヒルが、13歳の主人公に自身の少年期を託し、横暴な兄に勝ちたい反抗心や、自分より少しだけ年上な少年たちが、ものすごく大人に見える気分を、等身大の映像日記のごとく綴っていく。監督から登場人物への目線が、やたらと愛おしい。
90年代の陽性なポップカルチャーに乗せられつつ、イケてると思ってた年上少年たちの隠れた悩みや屈折、能天気な童貞喪失の後ろめたさなど、差別意識、男性優位主義を適所にサラリとまぶし、つねに漂うのは十代特有の物哀しさ。このテイスト、後を引く。

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森 直人

Tシャツとバギーパンツの時代

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

至福の85分! 90年代の青春世界像の再現では現時点ベストだと思う。LAのスケートパークを捉えるスーパー16mmのザラついた映像とHi8の魚眼レンズ。ピクシーズ、バッド・ブレインズ、ミスフィッツ、ATCQ……オルタナ&ハードコアとヒップホップが交差する選曲は“あの頃の感じ”そのまま。リアルな環境設計の中で多感な思春期の焦燥が描かれる。

ボーイズ・クラブの祝祭が、やがて分かれ道に差し掛かる哀切は王道の味。参照先の筆頭は『KIDS』だろうが、Z-BOYSの『ロード・オブ・ドッグタウン』と、『行き止まりの世界に生まれて』(大傑作)を繋ぐ物語と言えるかも。ジョナ・ヒル、何て素敵すぎる監督デビュー作!

この短評にはネタバレを含んでいます
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