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本気のしるし 《劇場版》 (2020):映画短評

本気のしるし 《劇場版》 (2020)

2020年10月9日公開

本気のしるし 《劇場版》
(C) 星里もちる・小学館/メ~テレ

ライター3人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4.7

くれい響

地獄でなぜ悪い

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

“いい人”の次元を超え、「地獄でなぜ悪い」と言わんばかりにファムファタールに沼堕ちする会社員(ペットのザリガニの名はマーロウ!)など、どのキャラにも共感できない面白さ。しかも、『浮雲』入った主人公をとりまく女性陣が絡み、ラブコメと化すかと思いきや、さらにサイコホラー化。ジェンダー問題に踏み込み、効果的なロングショットが繰り出されるなか、物語は転がり続け、気づけば4時間と、深田晃司監督の策略にハマること間違いなし。終盤にかけて若干失速するものの、とにかく先輩役の石橋けいとインテリヤクザ役の北村有起哉の芝居が絶品。文字通り、連ドラを劇場でイッキ観する感覚で挑むべき“化け物映画”だ。

この短評にはネタバレを含んでいます
斉藤 博昭

人は地獄を見たいのか? そうなのだ、と動揺が止まらぬ232分

斉藤 博昭 評価: ★★★★★ ★★★★★

とことん「お人好し」なモテ男。無意識に相手を狂わす悪魔/究極の天使の二面性をもつ女。極端なキャラを、日常と地続きで共鳴させる主演2人の表現力がすさまじいレベル(監督の演出の賜物か)。困った人を助けずにはいられない。そんな人間の本能が「いい人は幸せにならない」現実に行き着く強烈な皮肉(これも深田監督らしい)に何度も全身が震えた。
一途さ、嫉妬、執念、諦め、思い込み、気遣い、憎しみ、本音と建前、そして忘却と死……。愛にまつわるあらゆる感情が、ドラマ全体の適所に配置され、生々しいセリフで怒涛のごとく繰り出されるので、われわれも愛の地獄にひたすら陶酔するのみ。やや唐突なつなぎも、心ざわめく効果に。

この短評にはネタバレを含んでいます
森 直人

完全に本気の深田晃司

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

星里もちるの原作漫画をしっかり踏襲した内容だが、同時に純正の深田晃司作品にしか見えない。要約すると「ある男がヘンな女に出会い、運命を変えられる話」。一見ファム・ファタールのようで、実は『散り行く花』に近い流転のヒロイン。この「ヘンな女」=浮世(土村芳)は、男性原理社会の捻れた犠牲者という点で『よこがお』の市子の応用形のようだ。

クールで八方美人の「ある男」=辻(森崎ウィン)は無意識の層に巨大な虚無が巣食っているような顔が凄い。『窮鼠はチーズの夢を見る』の恭一と同じく愛の闖入者によって「流され侍」の秩序が破壊されていき、やがて我々は彼と共に、日常の中にぽっかり空いた異界の淵に立つことになる。

この短評にはネタバレを含んでいます
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