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スパイの妻<劇場版> (2020):映画短評

スパイの妻<劇場版> (2020)

2020年10月16日公開 115分

スパイの妻<劇場版>
(C) 2020 NHK, NEP, Incline, C&I

ライター4人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4.8

轟 夕起夫

蒼井優“人妻”三部作の頂点として眺めてみたい!

轟 夕起夫 評価: ★★★★★ ★★★★★

主演の蒼井優は、黒沢清監督とは3度目のタッグ。最初はWOWOWのドラマ『贖罪』(12)の第1話「フランス人形」で、私見によればこれ、蒼井優=ノラ、黒沢清版『人形の家』だった(そう、あのイプセンの!)。で、次がワンポイント出演ながら強烈な爪痕を残した映画『岸辺の旅』(15)。既婚者同士の不倫がバレても、何ら悪びれない役柄。

そして今回も人妻役なのだが、従来の黒沢作品のヒロイン像を担いつつ、(濱口竜介と野原位の脚本の力もあって)まさかの増村保造テイスト、すなわち若尾文子的な盲獣/猛獣キャラへと進化。ホップ、ステップ、ジャンプ! 蒼井優“人妻”三部作の頂点として括って眺めると、面白さ倍増である。

この短評にはネタバレを含んでいます
くれい響

ヨーロッパ映画のような格調高さも漂う

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

歴史ミステリーにして、「正義」を問うテーマ性や舞台劇のようなセリフ回しなど、一見手強い作品にも見えるかもしれない。だが、『ロマンスドール』に続いて夫婦を演じる芸達者な蒼井優と高橋一生に加え、やっぱり味のある東出昌大やキャリア最高の存在感を放つ坂東龍汰など、各々の芝居の面白さが随所に光る。展開が進むほど、不穏かつ不気味になる紛れもない“黒沢映画”だが、ヨーロッパの文芸作のような格調高さも漂い、ベネチアで評価を受けたのも納得。ただ、8Kなど、NHKの最先端技術を使用した意欲作として見ると、やや疑問が残る。大河や朝ドラを手掛けた撮影・照明チームに関しても、もっと遊び心が欲しかった感アリ。

この短評にはネタバレを含んでいます
村松 健太郎

正義のために

村松 健太郎 評価: ★★★★★ ★★★★★

ジャンル映画でヴェネチア銀獅子賞まで到達した黒沢清監督にまず拍手。
サスペンス、夫婦と黒沢作品ではお馴染みの要素が本作でも見事に効いています。
半ば自然にそうなったと言うことですが、この10年ほどはヒロインが重きをなす作品が続いています。
本作ではとうとうタイトルロールになっています。
そしてそのスパイの妻を演じる蒼井優。一時の激情型演技から最近はスッと力みが取れた演技を見せてくれてます。本来はこの位でも十分圧倒的な存在になれる人です。
彼女を挟んで対照的なキャラとなる高橋一生と東出昌大も持ち味をいかんなく発揮しています。

この短評にはネタバレを含んでいます
斉藤 博昭

ホラー的に本能を刺激してくる、極上の作りもの

斉藤 博昭 評価: ★★★★★ ★★★★★

恐怖要素の少ない『トウキョウソナタ』『岸辺の旅』でも、照明による不安感増幅、不穏な音楽、俳優のやや現実離れしたムードの演技で、本能的な心のざわめきを誘う黒澤監督の真骨頂が発揮された。それぞれ相手の本心を探り合う高橋一生、蒼井優、東出昌大の、感情以上にテクニックを優先したセリフの抑揚。これは単に時代の問題ではなく、監督が極上の「作りもの」を目指しての演出だろう。終盤のあるシーンでの蒼井の芝居は完全に演劇的。そして、監督の意図は見事に成功した。劇中で高橋一生が撮影するフィルムが、当然のごとく物語に絡むのだが、ややとってつけた感はあるにせよ、「映画」が登場人物の運命を変えるだけで心震えるから不思議!

この短評にはネタバレを含んでいます
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