ADVERTISEMENT

罪の声 (2020):映画短評

罪の声 (2020)

2020年10月30日公開 142分

罪の声
(C) 2020 映画「罪の声」製作委員会

ライター6人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4.7

中山 治美

隅々の配役までカンペキ!

中山 治美 評価: ★★★★★ ★★★★★

これが勢いにノる制作陣の手堅さと自信か。「アンナチュラル」「MIU404」と、事件に巻き込まれて人生を狂わされた人たちの情感を掬いとることに長けている脚本家・野木亜希子と原作の相性の良さは言わずもがな。強固な主演2人を据え、土井裕康監督らしいツウな俳優を適材適所に配したキャスティングにシビれる。その数たるや膨大だが、彼らが置かれた状況や人格が一目で分かるよう、衣装や美術など計算され尽くした細部に感嘆する。この物作りの真摯な姿勢は実在の事件をモデルにしていることへの配慮だけでなく、TBS系という報道機関が製作することの矜恃と反省も込められていのだろう。間違いなく今年を代表する傑作誕生だ。

この短評にはネタバレを含んでいます
なかざわひでゆき

犯罪に運命を狂わされた人々の哀しみ

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 バブル前夜の日本社会を震撼させ、‟キツネ目の男“の不気味な似顔絵と共に記憶される完全犯罪事件からインスパイアされた作品。だからというわけではないが、昭和の日本映画を彷彿とさせる堂々とした犯罪ミステリーに仕上がっている。大人の身勝手で犯罪に加担させられた少年が大人になってその事実に気付き、やがて新聞記者と共に事件の真相を探るわけだが、焦点となるのは犯罪によって運命を狂わされた人々の哀しみだ。時代背景をしっかりと織り込んだディテールの積み重ねが、あくまでも‟仮定”の物語に十分な説得力を与える。梶芽衣子に火野正平、浅茅陽子、佐川満男など脇を固める昭和のスターたちの顔ぶれも嬉しい。

この短評にはネタバレを含んでいます
村松 健太郎

罪と正義

村松 健太郎 評価: ★★★★★ ★★★★★

35年前の未解決事件を追いながら自分の中にある正義を問い直していくサスペンスでありミステリーであり、ロードムービーでもある大作ヒューマンドラマ。
野木亜紀子一座もたくさん参戦の豪華な、証言者リレーは圧巻。そして、裏主役ともいうべき宇野祥平の渾身の演技は必見。顔と名前を忘れずに!
小栗旬、星野源という勢いと華のある主演の二人、贅沢過ぎる共演陣、あの原作を見事にさばいた野木亜紀子脚本と土井裕泰演出。
全てのピースががっちりとはまった文句のつけようのない風格を感じさせる一本です。

この短評にはネタバレを含んでいます
くれい響

韓国映画に勝るとも劣らぬ未解決事件の映画化

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

40代以上ならトラウマな“キツネ目の男”事件が題材のリアルフィクションを、小栗旬と星野源W主演で映画化する意外性。序盤からテンポ良く、2人の抑えた芝居や隅々までこだわりを感じる配役から目が離せなくなる。それぞれ真相を追ってきた2人の対峙シーンは鳥肌モノだが、そこからのバディ展開で面白さが加速。これまで『いま、会いにゆきます』など、泣ける王道ラブストーリーのイメージが強かった土井裕泰監督だが、今回は原作を巧く整理しながら、去りゆく生命と生まれる生命を対比させた人間ドラマにまとめるなど、優しさ感じる野木亜紀子の脚色と相まって、韓国映画に勝るとも劣らぬ社会派エンタメに仕上げている。

この短評にはネタバレを含んでいます
相馬 学

知らず知らずに犯した罪から人は逃れられるか?

相馬 学 評価: ★★★★★ ★★★★★

 幼い頃に何もわからず、録音された自分の声。それが歴史的な犯罪に使われていたと、大人になって知ったら心に何が渦巻くのか?“もう時効だし”と割り切れればある意味幸いで、本作の主人公は逆に罪悪感に苛まれる。面白いのはそんなドラマ。

 主人公の苦悩に焦点を当て、真犯人捜しにミステリーを宿らせ、物語を綺麗に着地させる。『映画 ビリギャル』に続き土井裕泰監督の才腕を確認。大人になった主人公の仕事を絡め、スーツ作りに結論を重ねた点も巧い。

 主演の星野源は無垢な雰囲気をうまく表現。彼と交流する、もうひとりの主人公を演じた小栗旬も妙味を発揮。前者は最初から共感を引き、後者が追随する作りの妙もイイ。

この短評にはネタバレを含んでいます
斉藤 博昭

過酷な事件の真相に対し、小栗旬も星野源も決して我を忘れない

斉藤 博昭 評価: ★★★★★ ★★★★★

始まって10分も経たぬうちに背筋がゾクリとする瞬間が訪れ、その後も、子供時代に犯人に加担したかもしれない贖罪の側と、時効になった大事件に取り組む記者の両面から、じわじわと、しかもテンポよく真実に迫っていくので、とくに両者がひとつになるまでの前半は一瞬の緩みも与えない。やや複雑な事件の全容も意外なほどすっきり頭に入ってくる。
登場場面がわずかな人物たちを、適役キャストが、その人の過去の人生まで思い起こさせるように名演し、圧巻である。主演2人が、あえて熱演を抑えたのも効果的。
実際の事件はあくまでモチーフだが、「キツネ目の男」の似顔絵を記憶している人は、全編、どこか不安な感覚を味わい続けるだろう。

この短評にはネタバレを含んでいます
ADVERTISEMENT

人気の記事

ADVERTISEMENT

話題の動画

ADVERTISEMENT

最新の映画短評

ADVERTISEMENT