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劇場版『アンダードッグ』【前編】 (2020):映画短評

劇場版『アンダードッグ』【前編】 (2020)

2020年11月27日公開 131分

劇場版『アンダードッグ』【前編】
(C) 2020「アンダードッグ」製作委員会

ライター7人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4.4

なかざわひでゆき

土壇場で発揮されるダメ人間の意地

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 チャンピオンの栄光を掴み損ねた挫折感から立ち直れず、自らを憐れみ続けながら落ちるところまで落ちていく根性なしの負け犬ボクサーを中心に、社会の底辺で這いつくばりながら懸命に生きている人々の人生が交錯していく。2部作の前編となる本作では、そんな主人公がいきなり現れた前途洋々たる新人ボクサーに心かき乱される一方、テレビの企画ネタでボクシングに挑戦する売れない2世タレント芸人の本気に圧倒される。崖っぷちに立たされた者同士の明暗を分ける終盤のエキシビションマッチのドラマチックなこと!森山未來の完璧な役作りも然ることながら、土壇場で発揮されるダメ人間の意地を凄まじい気迫で演じる勝地涼が見事!

この短評にはネタバレを含んでいます
相馬 学

負け犬バトル、第一ラウンドの勝者は?

相馬 学 評価: ★★★★★ ★★★★★

 前・後編を通じて描かれるのは“輝く”ための負け犬の生き方。光に向かうも、たどりつけそうでたどりつけない、そんな市井の人々のもがきが群像劇として表現される。

 輝きたいと思うのは、どんな人間でも一緒だが、そのために何をするべきか? 噛ませ犬に徹するロートルのボクサーも、新人ボクサーも、やさぐれたデリヘル嬢も、それを探している。そんなドラマを落とし込む、1960年代後半~70年代前半の深作欣二作品にも似たバタ臭い世界観がハマった。

 面白いのは、勝地涼扮する芸人の立ち位置。リングに上がった彼のギラついた目こそ、本作最大の輝きだ。『百円の恋』に劣らず、泣ける。

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山縣みどり

リングに立つことがレゾンデートルなり!

山縣みどり 評価: ★★★★★ ★★★★★

掴みかけた栄光にしがみつく、咬ませ犬ボクサーの物語というプレミスには悲壮感が漂う。しかし、負け犬たちの戦いは情けなくも胸に響き、最後は不思議な爽快感に包まれる! 息子を失望させる崖っぷち男を森山未來が演じる時点で期待度は高いのだが、勝地涼と北村匠海も負けていない。キャラになり切るのは当然だが、しっかりと肉体改造し、ボクシング場面は迫力たっぷり。三者三様の思いを抱えてリングに立つ3人が、そこで戦うのは実は自分自身という『ロッキー』的展開に胸アツ。彼らにとっては戦うことがレゾンデートルであり、勝つのは二の次なのかも。前後編の長尺だが、1本の作品として一気見することをお勧めしたい。

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くれい響

勝地涼とロバート山本の掛け合いに胸アツ

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

いろんな意味で、予想を裏切らないといえるだろう。どこか既視感のある三者三様のストーリーに対して、全身全霊でぶつかってくる3人の俳優たち。森山未來は言わずもがな、北村匠海は見せ場的に【後編】に期待するとして、勝地涼に関しては間違いなく代表作となった。崖っぷち芸人としてのオン/オフの芝居はもちろん、違和感なくセコンド役で登場するプロボクサー、ロバート山本の掛け合いは胸アツである。とはいえ、物語の運び方に関しては、いろいろと難アリ。さらに、『百円の恋』同様、もうひとつの肉体と肉体のぶつかり合いとして濡れ場を挟む演出も妙にクドく、131分は冗長すぎる。

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斉藤 博昭

ボクサーの肉体を「見せる」資質を実感。芸人の悲哀も痛い

斉藤 博昭 評価: ★★★★★ ★★★★★

噛ませ犬の立場でもリングの闘いにしがみつく、元ランク1位ボクサー。痛々しくも、やるせない姿が職業の枠を超え、誰もが有する「もっと輝きたい」本能に突き刺さる。演じる森山未來は感情を限りなく内に押さえ込んだ表情を貫くが、動き出せば一転、全身で体現するボクサーのフォルム、その美しさに惚れぼれ! ダンサーとしての能力が「肉体を見せる」ことに確実に寄与しているのだ。
そして森山に負けないほど、中盤からグイグイくるのが勝地涼。落ち目になりつつある芸人の哀愁に加え、闘争本能にスイッチが入る瞬間は鳥肌モノ。
パンチが入る音や、スローの使い方などボクシング場面の演出は的確を極め、テレビのヤラセも旨いスパイスに。

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平沢 薫

身体の動きがドラマを語る

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 前編、後編という時間の長さが必要なのは、描く内容が複雑だからではない。主要登場人物3人それぞれのドラマを、セリフではなく、彼らの身体の動きによって語らせるためだろう。まず、彼らがトレーニングをしている時間がとても長い。その間中、ずっと彼らの身体の動きを見ていると、そこに彼らの心情のさまざまな揺れ動きが現れてくるのが見える。さらに、それぞれの試合の時間も長い。試合中の動きはシンプルで、ただ打たれないこと、ただ打つことだけに集中した動きなのだが、そこにもまた激しい感情の動きがある。そうして、それらの動きを見ているだけで、こちらの気持ちがその動きに引き寄せられ、持っていかれてしまうのだ。

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森 直人

ストレートに「泣ける」という言葉を使いたい

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

まずは131分、この前半戦を目撃したらもうじっとしていられない。『百円の恋』から6年、『全裸監督』を通過した武正晴の語りの持久力は無双状態に突入。最近「作家」的に際立つ足立紳の脚本は、今回ジャンル映画然とした枠組みに飛び込むことで「職人」としての凄みを頂上レベルで発揮した。エキシビジョンのテーマの選曲もいい!

役者も全員最高。いちばんの大枠は森山未來と北村匠海の二焦点だが、サプライズは勝地涼だ。本作の主題をいち早く体現。以降、あらゆる「自分との闘い」が群像ドラマを熱く織り成す。女性キャラクターの多くはまだセコンドに居るが、瀧内久美をはじめ、その存在感はむしろ後編でさらにせり上がることになる。

この短評にはネタバレを含んでいます
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