「わきまえた女」であることを強いられてきた女性たちの痛み

父親を殺害した容疑で逮捕されものの供述が二転三転する女子大生と、その動機の解明に取り組む公認心理士による緊迫した心理戦を描いたサスペンスなのだが、やはり注目すべきは事件の背景に横たわる日本社会の根深い男尊女卑の風潮にあるだろう。浮かび上がるのは、男性にとって都合の良い「わきまえた女」であることを強いられ、「嫌だ」という抵抗の声を封じられてきた女性たちの、世代を超えて心に刻まれた深い傷の痛み。一見したところ加害者側に思える女性もまたその被害者だ。奇しくも東京五輪組織委員会会長の女性蔑視発言が問題視される中、今の日本人が真剣に向き合わねばならないテーマを孕んだ映画であることは間違いない。