映画を「独壇場」のステージにする役者トム・ハーディの本領

まさに「トム・ハーディ劇場」。“スカーフェイス”の最晩年――王国の没落の只中にいるアル・カポネの最期を赤裸々に演じる(幾つもの瞬間でダブるのが『ゴッドファーザー』のM・ブランドだ)。ギャング映画というジャンルの最大貢献者としてフィクションの中でより神格化されてきた裏社会の成り上がりのカリスマ。本作のハーディはその偶像を墓場に向けて解体する作業を請け負った。
作品組成は“一人芝居”の構造。『ブロンソン』『オン・ザ・ハイウェイ』『レジェンド 狂気の美学』『ヴェノム』といったハーディお得意の全編ほぼ出ずっぱりの系譜に連なる。内的な迷宮を彷徨うカポネの“圧巻の醜態”を軸に全てが設計された怪作だ。