"アジア的なるもの"を描く色、形、所作が美しい

現実に存在する特定の国ではない、"概念としてのアジア的な世界"を描く映像が魅了する。ジャワの影絵芝居を連想させる映像で始まり、夜の河に花を流し、東洋武術の動きで格闘する。色も形も所作も、アジアの意匠を下敷きにしつつ、アニメーションという形式だからこその抽象化、デザイン化を駆使。その抽象化を、石の表面の手触りまで伝わるディティールの緻密さが支えている。
そして人々はみな"人間を超える崇高なもの"---この物語ではそれは"龍"の形をしている---を敬う。その"敬う"という概念が身についているので、誰もがそれに出会うとおのずと敬いの仕草をする。この現実のアジアでは失われつつある所作が美しい。