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きまじめ楽隊のぼんやり戦争 (2020):映画短評

きまじめ楽隊のぼんやり戦争 (2020)

2021年3月26日公開 105分

きまじめ楽隊のぼんやり戦争
(C) 2020「きまじめ楽隊のぼんやり戦争」フィルムプロジェクト

ライター3人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4

くれい響

ロイ・アンダーソン、カウリスマキ好きなら挑む価値アリ

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

独特な世界観で展開されるオフビートな笑いと、戦争や格差社会に対する痛烈なメッセージ。近年の日本映画において、ロイ・アンダーソンやアキ・カウリスマキ監督作のような離れ業を、サラリとやってのけた池田暁監督の意欲は買いたいところだ。初主演となる前原滉や町長役の石橋蓮司など、飄々としたキャラと化す役者たちの芝居は、まるで舞台を観ているような感覚で、妙な緊張感も心地よい。そこに、シュールコントを得意としていたシティボーイズのきたろうが入ることでの化学反応。とはいえ、寸止め感が巧い前記の監督に対し、やりすぎ感があまりに目立ち、尺的にも70~80分にまとめてほしかった感アリ。

この短評にはネタバレを含んでいます
山縣みどり

オフビートでシニカルな反戦映画

山縣みどり 評価: ★★★★★ ★★★★★

そう見えないが、戦時下という田舎町が舞台の反戦映画だ。「敵の隣町はコワイ」という気持ちで戦いに臨む兵士や自称・物知り親父、肝心なことははぐらかす町長や融通が効かない受付嬢といった登場人物はユーモラスだが、これは日本の今や疑問をそのままにして無自覚に生きる我々の姿をパロディ化したもの。痛たたたっ、降参です。演劇的な演出も面白いし、オフビートな笑いにシニカルな社会風刺を交えた池田暁監督の視点が斬新だ。それと美術が素晴らしい! 昭和初期の建築物を探したのか新たにセットを組んだのはわからないが、ほのぼの感たっぷり。その長閑な風景と真逆のラストにやられました。

この短評にはネタバレを含んでいます
森 直人

「向こう岸」への想像力を問う傑作

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

『山守クリップ工場の辺り』等の唯一無二の奇才、池田暁監督がついにオーバーグラウンドに浮上する。これは日本という土壌において「作られるべき、なのに無かった映画」として迎えられるのではないか。異世界のようで現実の写し絵。『ガロ』的ナンセンスにして鋭い風刺寓話。その独特の様式の奥に装備した「世界の縮図」的な批評性を一気に前面化させたのが今回の達成だ。

土着と前衛の混合はつげ義春。幾何学的なアート&コントの設計はタチや小津。チャップリンやアンゲロプロス等も連想させつつ、様々な類の暴力が横行する「村」のメカニズムを解剖。シュールな笑いの中、思考停止を撃つどストレートな正論の強さに満ちている。

この短評にはネタバレを含んでいます
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