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るろうに剣心 最終章 The Beginning (2020):映画短評

るろうに剣心 最終章 The Beginning (2020)

2021年6月4日公開 137分

るろうに剣心 最終章 The Beginning
(C) 和月伸宏/集英社 (C) 2020 映画「るろうに剣心 最終章 The Final / The Beginning」製作委員会

ライター7人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4.6

斉藤 博昭

「The Final」からの激しい揺り戻しで、人斬りの原点へ

斉藤 博昭 評価: ★★★★★ ★★★★★

冒頭から人斬りマシン感が全開の抜刀斎=剣心は、過去作で時折見せていた、とぼけたムード一切封印のシリアス&ダークさで、ジョーカーのようなヒールの味わいも濃厚。その一貫性が、いい感じ。アクションも荒唐無稽さが後退。リアルな殺陣を重視した「本格派」を究めた印象。立ち位置はスピンオフっぽいが、それをシリーズ最後に持ってきてループを作る挑戦が大胆。しかも成功かと。
ドラマ部分は前作である程度、予告されたので驚きは少ない。これも予想どおりだが、有村架純の「運命の人」感は希薄で、本人の演技というより、キャスティングに違和感。そこが気にならなければ、終幕は美しすぎるのでは? ただ美しすぎて、物足りなさも残る。

この短評にはネタバレを含んでいます
清水 節

佐藤健の成熟を得て、孤独な魂が生きづらさを超克する現代の神話

清水 節 評価: ★★★★★ ★★★★★

始まりへと逆行する完結編は、禍々しい魂が運命的な出会いを経て命の尊さを知り、狂気を浄化させていく繊細な抒情詩だ。最大級のエンタメから最上質のドラマへ。孤独な2人の心を寄せ合う悲恋が、血生臭い殺陣で魅せる時代劇の品格を高める。負の情念を断ち、戦う意味を問い直し、過去4作への視点を更新する。スタッフと俳優が体を張った10年間のドキュメンタリー的サーガは、振り出しに戻った。フレームの外を見つめながら現実社会と斬り結ぶ大友啓史。その演出は結果的に歳月までも取り込み、行動原理の起点を常に思い描いてきた佐藤健の演技的成熟を得て、重く劇的な追憶編を、生きづらさを抱える若者達に光明を与える神話へと昇華させた。

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くれい響

これまでのシリーズと一線を画す時代劇感

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

海外でも人気の高い「追憶編」を、最後の最後に実写化。剣心の「人斬り抜刀斎」時代を描いた『The Beginning』だけに、一瞬にしてスプラッタと化す冒頭から、これまでのシリーズとは異なる空気感が張り詰める。その後も、コミカル要素も、「おろ?」も一切なし! しかも、基本カメラは固定、長回しで撮影され、色彩も抜かれるなど、「俺が「龍馬伝」の大友だ!」の声が聞こえてきそうな本格時代劇としての重厚感に呑まれていくことだろう。『The Final』における巴とのエピソードをおさらいする部分も多いため、そこに関しては賛否あるかもしれないが、ストイックにドラマを描こうとした想いは十分伝わってくる。

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なかざわひでゆき

シリーズのラストを飾るに相応しい正統派時代劇

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 これが本当に最後の最後となる『るろうに剣心 最終章』の第二弾。幕末の動乱を背景に、剣心が「不殺の誓い」を立てることになった宿命の悲恋ドラマが描かれる。過去作の洋画的な荒唐無稽とスペクタクルをあえて封印し、紛れもない正統派の時代劇で攻めてきたのは嬉しい驚き。その血生臭くも端正でスタイリッシュな世界観は黒澤明というよりも三隈研次や田中徳三、どれだけ崇高な理想を掲げようとも戦争に正義など存在しないこと描く骨太なストーリーは小林正樹や今井正にも通じるものがある。その美しい佇まいの中に狂気すら漂わせる佐藤健の芝居にも並々ならぬ気迫が感じられる。シリーズのラストを飾るに相応しい傑作だ。

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森 直人

『るろ剣』は常に時代と果敢に斬り結ぶ

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

緊急事態宣言下で劇場公開に踏み切った『るろうに剣心 最終章』は、昨年におけるノーランの『TENET』の奮闘を彷彿させるものだ。サーガ全体ではエピソード・ゼロとして配置される『The Beginning』は、お祭り的活劇性ではなく硬質のストイシズムとリリシズムに徹した因縁劇。シリーズの中で最も大友啓史の作家性が純粋に結晶したものではないか。

『るろ剣』プロジェクトを導いた設計主義者としての大友の力量が、小品の慎ましさを備えるこの一本に注ぎ込まれる。歴史の中で繰り返されてきた「負の連鎖」とその超克を、エンタメのフィルターを通し現代の問題へと照射する試み。監督の前作『影裏』との連続性も興味深い。

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中山 治美

無限ループ完成

中山 治美 評価: ★★★★★ ★★★★★

時代が遡ることで、抗えない加齢とどう向き合うのか懸念していたが冒頭で邪念は吹き飛ばされた。佐藤健のアクションは俊敏さと凄味が増し、さらにまた新たなソードアクションの技を披露してくれるとは。そして物語は剣心の傷痕と不殺を誓った謎が明かされるが、そこに至る祇園祭のシーンが秀逸。巴が大義名分を掲げて殺戮を繰り返すことへの疑問の言葉を剣心に投げかけるのだが、それは武勇伝を持って語られることの多い歴史を捉え直す契機を与えてくれるだけでなく、戦が止まぬ現代社会へのメッセージも込められているのだろう。これを踏まえてシリーズを初めから見返してみたくなることを必至。類のない壮大なシリーズの完成だ。

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村松 健太郎

シリーズ最高密度

村松 健太郎 評価: ★★★★★ ★★★★★

全ての始まりの物語。5部作という大きな円環を形作り最後のピースであり、今までのシリーズの見方を変えてくれる作品。
The Finalが最高熱量作品なら、こちらは最後密度の作品と言って良いでしょう。
流浪人ではなく人斬り抜刀斎である剣心その手には逆刃刀はなく、振るう刃は容赦なく人の命を奪います。
分かっていましたが、ここまで緊張感と殺伐さ、儚さを伴った作品になるとは思いませんでした。
運命の人・雪代巴を演じる有村架純が感じたプレッシャーたるや想像以上のものと思いますが、緋村剣心の総に通じる運命の人を見事に演じきりました。そして、最後までシリーズを支え続けた佐藤健には感謝の気持ちでいっぱいです。

この短評にはネタバレを含んでいます
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