佐藤健の成熟を得て、孤独な魂が生きづらさを超克する現代の神話

始まりへと逆行する完結編は、禍々しい魂が運命的な出会いを経て命の尊さを知り、狂気を浄化させていく繊細な抒情詩だ。最大級のエンタメから最上質のドラマへ。孤独な2人の心を寄せ合う悲恋が、血生臭い殺陣で魅せる時代劇の品格を高める。負の情念を断ち、戦う意味を問い直し、過去4作への視点を更新する。スタッフと俳優が体を張った10年間のドキュメンタリー的サーガは、振り出しに戻った。フレームの外を見つめながら現実社会と斬り結ぶ大友啓史。その演出は結果的に歳月までも取り込み、行動原理の起点を常に思い描いてきた佐藤健の演技的成熟を得て、重く劇的な追憶編を、生きづらさを抱える若者達に光明を与える神話へと昇華させた。