”感動”で終わらせてはいけないテーマだが……

吉永小百合の存在が大き過ぎて、幻想を抱いた役になりがちだが今回は比較的等身大。しかも現役医師の原作で、脚本は山田洋次監督作を手がけている平松恵美子だ。自ずと娯楽の表層をまとったピリリとした社会派ドラマを期待していたが、先に同じ在宅医を主人公にした『痛くない死に方』と同作の医療監修を務めた長尾和宏先生のドキュメンタリー『けったいな町医者』が公開され、在宅医療に頼らざるを得ない患者の事情も死の現実もとくと描いていただけに、それと比較すると物足りなさが残る。ラストが非常に重いテーマを投げかけているだけに、豪華キャスト映画の弊害か、そこに至るまでのエピソードの盛り込み過ぎとテーマの散漫さが悔やまれる。