犬たちのいる場所が異世界のように見えてくる

2021年6月7日 平沢 薫 犬は歌わない ★★★★★ ★★★★★

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犬は歌わない

 映像がずっと詩のように美しい。雨上がりの人間が誰もいない濡れた舗道を、犬が音もなく歩いていく。どこにでもありそうなそうした光景が、この映画ではまるで異世界の風景のように見える。
 映画が描くものは単純ではない。画面には、かつて人間が犬に行った事を映し出す記録映像のようにもSF映画のようにも見える映像と、現在のモスクワの路上で生きる犬たちの日々の行動を静かに追い続ける映像の双方が映し出され、それを見ているとつい、犬の行動理由を人間の尺度で解釈したくなるのだが、彼らの次の行動がその解釈を裏切る。理解しているつもりで実は理解不能なものが美しく、時に恐ろしくも見える。

平沢 薫

平沢 薫

略歴:映画ライター。視覚に訴えかけるビジュアルの派手な映画がお気に入り。「SCREEN」「SCREEN ONLINE」「日経エンタテインメント!」「キネマ旬報」「SFマガジン」「映画.com」「Movie Walker」等で執筆。他に「キングスマン:ゴールデン・サークル」ノベライズ、「グレートウォール」ノベライズ、「X-ファイル 2016」ノベライズ、「フランケンウィーニー」ノベライズ、「「ターミネーター:新起動/ジェニシス ビジュアルガイド」翻訳など。ウェブで映画やTVドラマのニュースを追いかけ中

近況:ドラマ「ロキ」のクリエイター、マイケル・ウォルドロンが2019年から製作に参加したSFコメディ・アニメシリーズ「リック・アンド・モーティ」を再視聴。思えば、これも「ロキ」同様、最初から多元宇宙モノだった。1話22分程度の短さも気軽で、見始めるとついつい何話か見てしまう今日この頃。

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